第4話 帰還

「ここが魔王の城だな」


 チート能力を使って四天王の残り三人をぱぱっと倒した公太郎は、空を飛んで瞬く間に魔王の城へとたどり着いていた。


「城の中へ入るまでもないな。ここからあぶり出してやる」


 公太郎が双剣の斬撃を放つと魔王の城はあっさりと崩れ去っていき、そこはただの瓦礫の山の転がる廃墟となった。


「さあ、出てこい魔王。これぐらいでくたばったりはしないだろう」


 公太郎の声に答えるように、崩れた瓦礫の山の上に火線が走り、それが六芒星の魔法陣の形を形成する。

 その魔法陣の中から抜け出るように巨大な骸骨の化物が姿を現した。


「よくぞ魔王を倒した、伝説の勇者よ! 我こそが全ての黒幕の破壊神よ!」

「なんだ、今ので魔王倒してたのか。あっけないな。まあ、いいか」


 公太郎は破壊神に向かって双剣を構えた。


「お前を倒せば終わりだ」

「我を倒すつもりか? だが、無駄なことだ。光のオーブと不死鳥の加護が無ければ我の炎を抜けダメージを負わせることなど出来はしないのだからな」

「関係ないね。俺にはチート能力があるからな」


 公太郎は跳躍する。その体を破壊神の吐いた炎が包み込む。だが、無傷。公太郎の剣は豆腐を切るようにあっさりと破壊神を切り裂いた。


「うぎゃー! そんな馬鹿なー!」


 破壊神は灰となって崩れ去っていく。黒い雲に覆われていた空が晴れていく。


「さて、帰るか」


 公太郎は剣をしまい、来た時と同じように空を飛んで帰っていった。



 魔王を倒して世界を救った英雄公太郎をみんなが祝福してくれた。そして、彼は姫と結婚することになった。

 婚礼の宴が開かれていたその時のことだった。


「あれ?」


 そこで公太郎の意識はふと遠くなった。



 気がつけば公太郎はこの異世界に来た時と同じような暗闇の中にいた。そこにちっこい少女の姿をした神様が現れた。


「わたしはあなたに謝罪しなければいけません。あなたが死んだと思ったのはわたしの勘違いでした」

「勘違い? それはどういうことですか?」

「あのドライバーの腕はこの神の想像というものを遥かに超えていました。あなたにトラックで突撃しながらも彼のたぐいまれなる運転テクニックはあなたの急所をわずかに外し、あなたは大怪我をしながらも奇跡的に一命を取り留めたのです。きっと彼の前世はエースと呼ばれたパイロットだったのでしょう」

「つまり、僕はどうなるんですか?」

「おめでとう。あなたは元の世界へ戻れます。運命に感謝」

「感謝じゃねえよ。僕を元の世界に戻せー!」

「ですから、これから戻しますよ。行きますよ!」

「ち……違う! 僕の世界はそっちじゃ……うわあああ!」


 公太郎は気がつくと病院の天井を見ていた。そこはベッドの上だった。

 動こうとしても体を動かすことも出来ず、目だけで周囲を確認する。

 そこは中世ではない、もといた現実の世界だった。


「先生! 公太郎君が目を覚ましました!」


 気がついた看護師が驚いて先生を呼びに行った。先生はすぐに来て公太郎の体を調べて、そして感激の声を上げた。


「信じられん! これは神の奇跡だ! 君の体はもう大怪我で動くことも出来ないが、生きていればきっと良いことはあるからね! さっそくご家族にも連絡して来てもらうことにするよ!」


 そして、医者と看護師は病室を出て行った。

 冗談じゃない。何が奇跡だ。僕を元の世界へ帰せ。

 そうののしりたかったが、公太郎の口は怪我でもう喋ることも出来なかった。

 そうして、公太郎は普通の平凡な生活すら出来なくなってしまったのだった

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