第27話 意気消沈
韋宇の死体が見つかったことで、大学は大騒ぎとなった。しかも首切りの猟奇的な死体だ。大騒ぎにならない方がおかしい。あっという間に警察が来て大学は封鎖された。
第一発見者であった僕と美玖は当然の如く事情聴取の対象にされた。
僕はきちんと全てを答えた。
鍵が開いていた。
開けたら韋宇が首をつっていた。
その手には頭が載っていた。
語っていても、全てが事実であるとは思いたくなかった。
やがて並茎警部が到着する。
彼女は僕達の姿を見ると、バツが悪そうに顔を顰める。
「その……この度は、何と言ったらいいか……」
「気にしないでください。警察の所為ではないのですから」
僕は視線を横に映す。
「勿論――お前の所為でもないからな、美玖」
「……」
美玖は黙って下を向いたままだった。
事件が起きてからずっとこの状態だった。僕が何を言っても反応せず、ただただ下を向いてじっと黙っているだけ。
……無理もないだろう。
何故ならば目の前で知り合いが死体となって発見されたのだ。
しかもあれだけ異常な形で。
ショックを受けて呆然とするのは至極当然のことだ。
――僕のような、死に慣れているような存在以外は。
「……今日の所はもう帰宅した方がいいですね」
並茎警部の言葉に頷き、僕と美玖は大学を後にした。あの空間にこれ以上いると気が滅入ってしまうのは事実としてあるので、先程の提案はひどくありがたかった。
「大丈夫か?」
美玖が電車に乗る直前にそう訊ねると、彼女は言葉無く頷いた。
「家まで送って行こうか?」
「……」
首を横に振り、美玖はようやく言葉をひねり出す。
「……大丈夫。ごめん。大丈夫だから」
「本当か? 無理だったら連絡しろよ?」
「大丈夫。きちんと連絡するから」
彼女は片手を挙げ、電車に乗り込む。これ以上付いていくのは流石にしつこいだろう。不安だが、ここは一人にした方が良いかもしれない。
そう判断して、僕は彼女を見送った。
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