ハートだ!!!!
いやー、意外。読み終わってみると、非常にアツいハートの物語でした。
これは、大人向け骨太ファンタジーですね。
「竜の手術」という、前代未聞のテーマを描いた本作。
その手術に至るまでに、乗り越えなければいけない壁の数は2つや3つではありません。
もういくつあったかわかりません。
それらにひとつひとつ、真っ向から向き合うその姿は、まさに職人。
そのハートに共感し、熱くなれるのは、大人の特権ではないかと思います。
丁寧に作り込まれた世界観は、それを冷めさせることなくしっかりと物語の中へ誘ってくれます。
作者様をはじめとする、職人たちの集大成。
お見事でした。
竜の手術がモチーフの、ユニークなファンタジー。
前半は、前代未聞の手術を成功させるため、必要な技術や器具、人材を求め、主人公が旅するロードノベル仕立て。後半が、手術実践。――こう書くとわかるように、ちょっと黒澤の「七人の侍」に構成が似ている。つまり面白くないはずがないという王道構成。
手術のために古代の竜解剖図を入手したり、竜が持つ特異な皮膚構造をどう切り裂くか検討してメス代わりの特別な剣を入手したり――。ひとつひとつ課題を解決していく課程は、まさに「冒険」。つまり本作は変わり種ファンタジーではなく、実は王道ファンタジーなのだ。
週末の一夜、ファンタジー世界に本気で没頭するならふさわしい一作と言えるでしょう。