竜斬の理

作者 齊藤 紅人

205

78人が評価しました

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★★ Very Good!!

 竜を手術する。左様な発想は本作で生まれて初めて接した。不肖マスケッター、逆立ちしても、百回生まれ変わっても不可能な超人的跳躍点である。
 モノにもよりけりだが、よほど緊急な事態でない限り手術なるものは執刀医だけで行うものではない。麻酔科医、臨床工学技師、看護師といった人々がチームを組む。
 であるからには、本作が群像劇になるのも当然だ。語り部の魔法使いも充分に魅力的な人物ながら、一人一人のドラマや背景を鱈腹堪能出来る内容になっている。
 個人的には、ミスリルを鍛造していく場面が最も白眉に感じられた。それが単なる刀鍛冶を突き抜けて、国際的な力関係や駆け引きの影響を受けていることも重く厚く語られている。
 これほどの大作はそう滅多には目にかからない。本作の作者は、恐らくは旅行から帰ったらサービス精神ふんだんに土産話を隅から隅まで語り尽くすタイプではないだろうか。
 いざ、竜退治ならぬ竜治療へ。
 

★★★ Excellent!!!

ハートだ!!!!
いやー、意外。読み終わってみると、非常にアツいハートの物語でした。
これは、大人向け骨太ファンタジーですね。
「竜の手術」という、前代未聞のテーマを描いた本作。
その手術に至るまでに、乗り越えなければいけない壁の数は2つや3つではありません。
もういくつあったかわかりません。
それらにひとつひとつ、真っ向から向き合うその姿は、まさに職人。
そのハートに共感し、熱くなれるのは、大人の特権ではないかと思います。
丁寧に作り込まれた世界観は、それを冷めさせることなくしっかりと物語の中へ誘ってくれます。
作者様をはじめとする、職人たちの集大成。
お見事でした。

★★★ Excellent!!!

竜の手術がモチーフの、ユニークなファンタジー。

前半は、前代未聞の手術を成功させるため、必要な技術や器具、人材を求め、主人公が旅するロードノベル仕立て。後半が、手術実践。――こう書くとわかるように、ちょっと黒澤の「七人の侍」に構成が似ている。つまり面白くないはずがないという王道構成。

手術のために古代の竜解剖図を入手したり、竜が持つ特異な皮膚構造をどう切り裂くか検討してメス代わりの特別な剣を入手したり――。ひとつひとつ課題を解決していく課程は、まさに「冒険」。つまり本作は変わり種ファンタジーではなく、実は王道ファンタジーなのだ。

週末の一夜、ファンタジー世界に本気で没頭するならふさわしい一作と言えるでしょう。

★★★ Excellent!!!

とにかく最初から最後まで一気に読んで欲しい。面白い作品に出逢えた時は、ゴチャゴチャしたレビューよりもこの一言に尽きます。

とは言えそれで終わるわけにもいかないので、ちゃんとした感想も。
今作は国の命運とか威信をかけて竜を外科手術しようというお話です。
そのために宮廷所属だったり在野だったりの人材をかき集めて準備するお話です。
終盤ではもちろん手術に挑むのですか、この物語は7割近くを『手術の準備』に費やします。でもそれがメチャンコ面白い。

『リアリティ』とは現実の法則や史実に基づいたものだけでなく、『その世界でのルールに従っているか』という意味合いも含まれると思います。
この作品ではそのリアリティが深く追求されています。それがとにかく面白さを引き出しています。細かい設定だったり歴史だったり、それらが物語に必要な要素としてちゃんと語られており「ハイファンタジーってこうあるべきだよな」と感じさせてくれました。
しかしそれは本来当たり前の事であって、当たり前の事を当たり前にできているだけなんです。それがもう本当に素晴らしい。
剣術、製鉄、裁縫、解剖学、とにかく様々な知識と取材を物語の設定に落とし込んでいました。

非常に完成度の高い本格派正統ハイファンタジーといった印象でした。
とにかく最後まで読んで欲しい。ゼッタイ面白いから。強く自信を持ってオススメできる一作でした。

★★ Very Good!!

竜を手術というインパクトが何より凄い。
精霊や魔獣、それも回復をするようなストーリーであれば意外性はなかったかもしれない。
手術するためのいくつもの過程はしっかりと王道ファンタジーを貫いており、それが作中に登場する、この物語独特の用語をとっつきやすいものにしていると思う。

★★★ Excellent!!!

 こういったタイプのお話は初めて読みました。国を支える竜を病から救うために主人公であるゾッツが書物を漁り、人を探し、手術に必要な剣を一から造り上げる。
 このお話はファンタジーですが、愛らしいヒロインも派手なアクションも出てきません。出てくるのは精密な設定と、手術を行うためにひたすら本を漁り様々な人々と交渉を重ねるゾッツのひた向きさです。
 今までとは違うお話を読んでみたい。そんな人にお勧めな一作です。

★★★ Excellent!!!

竜が陣痛を起こした。寿命とは違うようだ。ならば、開腹手術を施そう……へ?

回復ではなく開腹。
竜を手術する話なんて初めて読ませて頂きました。発想が面白いですね。
さらに筆者の文章能力の高さ。架空のお話のはずが、薬草ひとつにしてもまるで目の前で葉っぱを見せられながら説明を聞いているよう。

長いお話しなので行ったり来たりでしたが、それが苦にならないのは物語として優れているからでしょう。


追伸:
生贄の少女という単語にエロシティズムを感じたぼくはエロジジイ(*^。^*)