195話「服をぬがさないで」
「ど、どういうことよ!? ぬ、脱ぐって、そんなの・・・・・・!」
「いや、でも・・・・・・そうしないと全部融かされちゃうかもしれないよ?」
「ぐっ・・・・・・そ、それは・・・・・・。けど、脱いだからって融かされないわけじゃ・・・・・・。」
「土で箱を作って入れておくから大丈夫。この迷宮を抜けてから着替えれば融かされる心配も無いし。」
土を食われない事は実験済みだから、きっちり密封してやれば問題は無いだろう。
まだ最初だってのに、ここで服を全部融かされた方がそれこそ問題だ。
「けど、それまで裸なんて・・・・・・。」
「代わりはちゃんと用意するから、それなら問題無いでしょ?」
しばらく頭を抱えたリーフがゆっくり口を開く。
「うぅ~・・・・・・分かってるわよ、他に方法が無いことなんて・・・・・・。」
「リーフのを最初に作るから、少しの間だけ我慢してて。」
「ダメよ。小さい子のから作りなさい。」
「分かったよ、了解。」
まずは全員の服を集めて、箱の中に収める。
待ってる間に融かされでもしたら意味が無いしな。
「じゃあ、まずはお姉ちゃんからだね。」
「・・・・・・何言ってるの?」
「いや、小さい子からだから。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・アリスから。」
「あ~、私は別に最後でも・・・・・・。」
「裸で作業された方が気になるし、早く自分のから作りなさい、アリス。」
まぁ、確かにそうか。
それに、たたき台を作るなら自分の体で調整していった方が簡単だろう。
となれば、まずは材料から・・・・・・って言っても、荷車から探すしかないんだけど。
土は当然使うとして、あとは――
「――ねぇアリス。嫌な予感しかしないのだけれど、一応聞いておくわ。さっきから野菜ばかり見て、何を探しているのかしら?」
「えーと、丈夫そうな・・・・・・葉っぱを・・・・・・。」
俺の答えを聞いて、リーフが絶望を通り越したような表情を浮かべた。
「だ、だって他に使えそうなの無いし・・・・・・。」
「えぇ、分かってる。分かってるわ、分かってるのよ・・・・・・。」
と、とにかく今は作業を進めよう。
あとは紐みたいなのが欲しいところだが、そうそう都合よく拾えてはいない。
俺が土で作ったところでカチカチの棒にしかならない。
だが、そこは頭の使いよう。
紐でなくても、紐の代わりになるものであれば良いわけだ。
俺は堅いものしか作れないが、形は自由に出来る。
例えば小さな輪っか。これを連続して繋げていけば・・・・・・。
「ふむ、鎖か。鎖帷子でも作るのか?」
「ううん、素肌に着ることになるから流石にね。時間もかかるし。でも鎖帷子ってのはいいかも。今度作ってみようかな。」
「その時は私の分も頼むとしよう。」
「ちゃんと皆の分つくるよ。」
「い、いいから手を動かしなさい、手を!」
「はーい。」
鎖を繋げて土台を作り、そこに葉を取り付けていくことになる。
ただ、葉も十分にあるわけではないから、全身を覆うことは出来ないだろう。
つまり局部を隠す程度にしか使えない。
葉の代わりに土のプレートを使ってもいいのだが、堅い上に重いからな。服の代わりとするには向いていない。
「よし、こんなものかな」
悪戦苦闘しながら何とか完成させた服・・・・・・というかビキニアーマーだな、こりゃ。
まぁ、どんなものでも裸でうろつくよりはマシだろう。
「ちょ、ちょっと・・・・・・それで完成なんて言うんじゃないでしょうね。」
「あ~・・・・・・一応完成・・・・・・かな。」
リーフはそれ以上何も言わないまま、手で顔を覆って伏せてしまった。
「で、でも葉っぱは使えそうなのを手に入れたら追加していくからさ。その、少しの間だけ我慢してくれたら嬉しいかな・・・・・・なんて。」
「ちょっと・・・・・・心の整理をさせて・・・・・・。」
そりゃ年頃の女の子なら当然だよね・・・・・・。
しかしそうも言ってられないのも現実。
「次はお姉ちゃんとニーナだね。」
「・・・・・・ん。」
「かっこいいの作ってよ!」
基本設計は自分ので終わっているから、サイズ調整くらいであまり時間はかからないだろう。
それに二人は背恰好が似ているし、ほぼ同じサイズでいけそうだ。
こうして間近でしっかり観察したことは無かったが、二人とも子供体型でありつつも引き締まった身体をしている。
これじゃ燃費も悪くなるわな。
「完成・・・・・・っと。意匠の方はとりあえずそれで我慢しておいて。先に皆の分作っちゃいたいからさ。付けたい飾りがあるならその間に考えておいて。」
「・・・・・・わかった。」
「じゃ、ボクたちはあっちで考えよう!」
「それじゃあ次はラビかな。そこに立って。」
「う・・・・・・うん、よろしくね。」
少し恥ずかしそうに立つラビの身体に合わせて、土の鎖を纏わせていく。
先の二人に比べると、柔らかくて子供らしい身体つきだ。
てかこれくらいが普通なんだろうけど。
「はい、ラビの分もこれで完成。」
「あ、ありがと。ちょっと・・・・・・恥ずかしいね。」
ラビでもやっぱりそう感じるか。
迷宮に入る時に来てたボロ布ですら肌を隠す役割は果たしていたわけだしなぁ・・・・・・。
早めに改良案を考えるか、この迷宮を抜けるかしたいところだ。
「次はフラムだね。いい?」
「ぅ、うん・・・・・・。」
フラムの肌は人一倍きめ細やかで美しい。
自分のと見比べるとやはり見劣ってしまう。
うーん・・・・・・学校に居る間は大体同じ物食ってた筈なんだけど・・・・・・。
貴族流のお手入れとかあるのだろうか。
「ごめんねフラム。こんなのしか作れなくて。」
妻なのか夫なのかどう言えばいいのか分からないが、配偶者にこんな格好をさせるのは気が引ける。
他の子たちはどうでもいいってことではないけども・・・・・・。
「ァ、アリスが作ってくれたもの、だから・・・・・・う、嬉しい。あ、ありがとう。」
そんなこと言ってくれるのフラムだけだよ、ホント・・・・・・。
「次はリーフだね。準備はいい?」
「サ、サーニャがまだでしょ?」
「いやー・・・・・・サーニャは最後で大丈夫そうだし・・・・・・。」
もろだし状態でもあっけらかんとして、ぶら下がっているスライムにじゃれついているサーニャ。
胸にぶら下がっている物体がそれに合わせて暴れている。
放っておいたらそのままずっと裸で過ごしかねないな。
「・・・・・・分かったわ、お願い。」
リーフの身体つきは今までの子たちと違って大人に近づいている。
まぁ、つまり・・・・・・出てるところは出ている。
だから服も同じようにデザインしても上手くいかないだろう。
後に控えたヒノカもサーニャも更に育っているので、ここでコツを掴んでおきたい。
「ひゃっ・・・・・・! あ、あまり変なところ触らないでくれるかしら!?」
「そ、そんなこと言ったって・・・・・・。」
触れないと細かいところの調整が難しいんだよ・・・・・・。
く、くそ・・・・・・なるべく意識しないように頑張ってるのに、そんな反応されるとこっちまで恥ずかしくなってくる。
リーフには、とにかく耐えてもらうしかない。
「か、完成・・・・・・。」
「うぅ・・・・・・もうお嫁に行けないわ・・・・・・。」
「今は女の子だけだし、大丈夫だよ。」
・・・・・・たぶん。
「小さい声で”たぶん”って言ったぁ~!」
しまった、つい言葉を漏らしてしまった!
こうなったら・・・・・・。
「つ、次はヒノカの番だね!!」
「あ・・・・・・あぁ、よろしく頼む。」
後が怖そう・・・・・・。
まぁ、とりあえず切り替えていこう。
一見堂々とした立ち居振る舞いのヒノカだが、その頬は紅潮しているのが分かる。
そりゃ一番年頃の女の子だしね・・・・・・。むしろよく耐えていると言っていい。
ヒノカの身体は筋肉はしっかりついているが、硬いものではなく柔軟性のあるしなやかな筋肉だ。
いつもはサラシで押さえつけられている胸と細く引き締まった腰のコントラストが眩しい。
「よし、できたよヒノカ。」
「ふむ、動きやすさは問題無いが・・・・・・やはり少々心もとないな。」
「それはー・・・・・・ごめん。」
「いや、責めるつもりで言ったのではないんだ、すまない。ただ、サラシが使えないと・・・・・・な。」
ヒノカは頬を更に赤くし、自分の体に目線を落としている。
恥ずかしいよね・・・・・・うん。
「次はサーニャね。」
「あちしは別にいらないけどにゃー・・・・・・。」
とは言いながらも素直に俺の前に立つサーニャ。
恥ずかしさは微塵も感じていないようだ。
こちらもヒノカと同じ様に柔らかな筋肉が張りのある肌を押し上げており、大きな胸もしっかりと支えている。
この中じゃ一番年下の筈なのになぁ・・・・・・。獣人の成長速度恐るべし。
俺の小さい手のひらでは収まりそうにない目の前のそれを下からグイと持ち上げてみる。
・・・・・・重い。
「にゃはは! くすぐったいにゃ!」
「ごめん、ごめん。これで完成だけど、キツかったりしない?」
「大丈夫にゃ! でも・・・・・・こんなの着けて意味あるにゃ?」
それは言わない約束だよ、おとっつぁん・・・・・・。
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