ParasiteⅢ ― loop 1 ―
黒板に描かれた文字にこの場にいる全員の視線が集中する。
書かれた内容はかろうじて読むことができ、女の子同士の喧嘩は男が仲裁するべきだなんてお節介な言葉が記されている。
ただ、文言の前に記された"幸福論"という言葉だけが、まるでこの文字の書き手が自己の存在を主張しているかの様な不気味さを感じさせる。
「これは、どういう事だ?」
「ふーん、気が付かなかった。いつの間に? 危害を加える気はないってことかな?」
唖然とし、ただ目の前の光景を眺めることだけしか出来ない僕とは違い、夢衣は至って冷静であり、違和感を覚えるほどに日常と同じ雰囲気を出している。
隣を横切る影がその妹の物であると理解すると同時に、なんでもないと言った様子で黒板へと近づく彼女へと慌てて声を荒らげた。
「あっ! 夢衣! 危ない、近づくな!」
僕の静止は夢衣に届いたはずだが、彼女はフリフリと片手を上げながらついには黒板の前へと到達してしまう。
何も出来ないが、何かをしなければと言う焦燥感。そしてもしかしたら妹が恐ろしい存在に危害を加えられるのではないかという危機感で、急いで彼女の元へと駆け寄る。
「……これ、ただのチョークだよ」
「そっか、けど、もし何かあったら大変だろ? あんまり心配させないでくれ」
「私は大丈夫だよ、お兄ちゃん」
僕の考えとは裏腹に、黒板の文字は何の変哲もないものだった。
妹の真似をして、ミミズを思わせるその文字に軽く指を這わせてみる。
指先に付いた白色の粉は確かに僕らがいつも使っている見慣れたチョークのものだった。
……特に変なところはない。
「そ、それよりどうするの
遅れて叶ちゃんが隣へと駆けつけてくる。
ぎゅっと僕の腕をとり、不安そうに見上げてきた。
「大丈夫だよ
「その前にすることがあるよ」
くるりと、わざとらしくスカートを浮き上がらせながら
彼女が指差す先にはギョッとした表情の
先ほどの異様な出来事に意識を持って行かれたが、そもそも彼女との話がまだ途中だったことを思い出す。
「うっ、なんだよ……」
「仲直りしたってことで! 楽しいお話をしましょう、沙織ちゃん先輩」
「楽しいお話? なんだそれ? 何かあるのか?」
楽しい話と聞いて途端に興味深そうな表情を浮かべている。
ただ僕はこのちょっと抜けたところのある先輩がこの後どの様な表情を見せるかよく知っている。
「貴方の知ってることを教えてほしいんだ、毒芹先輩。包み隠さず。嘘を言ったって分かるからね。可愛い可愛い後輩のお願いだもの、聞いてくれるよね、先輩?」
愛らしい言い草とは裏腹に、その言葉は苛烈だった。
あれほど言ったのに夢衣はまだ沙織先輩への敵対心を隠そうともせず、尋問官の様に彼女から情報を求める。
「あー、無理だ。あたしがゲロったってバレたらどうなるか分からない。うちの団体はあんまり福利厚生がよくないんだよ」
「団体? そっか、組織に所属しているんだ……」
「あっ、いや、その……」
すでに沙織先輩は夢衣の術中に嵌まっている。
誘導するの様に巧妙に紡ぎだされる彼女の言葉に、ずるずるとこちらが欲しい情報が引きずり出されている。
その手腕に僕も舌を巻いて感心する。僕だったらここまで上手には出来ないだろう。
「ねぇねぇ暁人くん。団体ってことはお仕事だよね? うちの高校ってアルバイトとかってダメだったんじゃないの?」
叶ちゃんでも無理だろう。不思議そうな表情で
「こ、これ以上は無理だ。別にお前たちが無理に知る必要はないだろう? 私も怒られたくないんだ、勘弁してくれないか?」
「教えてくれないの? じゃあどうしようかな? 私たちは平穏な毎日を過ごしたいだけなんだ。それだけなのに最近ちょっと不幸事が続いてね、イライラしているの。うあーっ、人間ばらばらにしたーい! 手当たり次第ばらばらにしたーい! なぁんて、ちらり」
小悪魔とはこの様な態度を言うのだろうか?
それともただの悪魔なのだろうか?
夢衣の言葉は冗談じみたものだったが、沙織先輩を驚愕させるには充分なもので、事実和らいだと思った彼女の表情から余裕が消え、どんどん青ざめていくのが分かった。
夢衣は怯える先輩を見つめながらクスクスと嗤っている。
どこかわざとらしい態度は夢衣なりの配慮なのだろう。
僕に対する、貴方の言葉をちゃんと聞いて大人しくしていますよ、という……。
けどその態度こそ夢衣が沙織先輩を信用していないこと、そもそも彼女のことなどなんとも思っていないだろうということ、僕がこの場にいなければ、もっと恐ろしい手段に出ていたであろうことを漠然と理解させてくる。
「わ、分かった、降参だ。あたしの知ってることを言うよ」
結局、このやり取りに置いては沙織先輩が全面的に折れることで決着が付く。
いやそもそも最初から勝負にはなっていなかったのだろう。
勝負とは対等な立場で初めて成立するものだ。
だとすれば、夢衣が悪夢であると理解した時点で、どちらが圧倒的に有利であるかなど聞くまでもない。
だから、この結末は最初から決まっていたことで、わかりきっていたことなんだ。
要点をまとめよう。
――この世界には悪夢と呼ばれる存在がある。
いつ初めて観測されたのか、どこで観測されたのか全てが不明なそれは、ある日突然人類の前に現れてその脅威で人々を翻弄したと言われている。
世界に入り込み、人が有する理解や倫理と言った言葉の外側で行動する事象の総称。
それは人間や犬猫などの生き物だったり、建築物やオモチャなどの物だったり。
はては物体として存在しない現象そのものだったり。
様々な形態を取り、そのどれもが同一性を保持しない超常の存在だ。
沙織先輩が所属する組織が作られたのも、そんな悪夢が人類へと及ぼす影響を最小限に留めるためだ。
一種だけで人類に対して致命的な影響を及ぼす可能性を保持した、物理的な破壊が原則的に不可能な存在――悪夢は、確認されているだけで総数百を超える。
それらを可能な限り無害化し遠ざけるのは人類に課せられた責務でもあり、決して逃れられない宿命でもある。
故に安全なものから致命的なものまで、それら全ては厳重な監視のもと、コントロールが試みられている。
沙織先輩もその様な重要な使命を持つ組織で、人類を守る一翼を担っている。
いつ終わるとも分からぬ世界を、人知れずなんとか存続させようと足掻く存在。
先輩は、そんな見窄らしく矮小な組織から派遣されてきた調査官なのだそうだ。
………
……
…
「凄く興味深かったです。けど、なんていうか毒芹先輩は守秘義務とかプライドとかってものがないんですか?」
その後も幾つか重要な情報や重要ではない情報。明らかにどうでも良い情報まで教えてもらった僕らは、一気にまくし立てて疲れたのか、げっそりとした表情の沙織先輩を呆れ顔で見やる。
予想以上にいろんなことを教えてくれた彼女には感謝しか無いが、それよりもその空気よりも軽い口が彼女の身を滅ぼさないか心配になってくる。
もっとも、彼女の気持ちも分からなくもない。誰だってこんな状況になったら口を滑らすだろう。
僕の軽口は、彼女から語られた人類の絶望的な状況、ともすればそれらから目を背けるためのものだったのかもしれない。
「あたしは誰よりも自分の身が可愛いんだよ! あと沙織ちゃんって呼べ!」
「ほへー、いろんなことを一気に言われたから、頭が追い付かないよぅ」
「夢衣が覚えているから別に叶さんは気にしなくていいよ」
沙織先輩からもたらされた情報は非常に貴重なもので、同時に聞くのでは無かったという絶望を突きつけてくる。
僕が遭遇した事件。あの悍ましく、恐ろしく、多くの人の命を奪った悪夢。
それが百種類以上確認されているなんて、世界がここまで致命的な状況に置かれていたなんて。
すっと全身から血の気が失せたような感覚に襲われ、どこか別の次元から恐ろしい何かが僕らをじぃっと観察しているかの様な錯覚を覚える。
ただ、その事実はどうしようもない現実をただ突きつけてくるだけで、僕らが本当に欲しかった情報は一つももたらしてはくれなかった。
つまりは僕らが現在遭遇しているこの現象に関して、沙織先輩はなんの情報も持ちあわせていないということだ。
そもそも……だ。
彼女がこの学校に転校してきたもの、この地域一帯に発生する殺人鬼とそれによって引き起こされた異常現象。つまり"芸術作品"が起こした事件の調査の為らしい。
結局のところ彼女も巻き込まれてしまったのだ、この異常な現象に。なんら対策を持つこと無く、一方的に、抗うこともできずに……。
世界が危機に瀕しているとしても、それを助けるヒーローも英雄も何もいない。
ここに存在するのはただ悪夢がもたらす無邪気な狂気に翻弄され、なんとかその脅威から人類を守ろうと足掻く無力な人々だけだ。
沙織先輩もそんな組織の一員で、監視員という悪夢が発生した場所に赴きその脅威度を調査する役目を担っているたけの存在。
世界を救う善の組織やヒーローは物語の中だけで、僕らに配られたカードは圧倒的に少ない。
「……で、あ、あたしは許された?」
「うーん。仕方ないね、無罪!」
「良かったですね、沙織先輩!」
「そもそも先輩はなにも悪く無いと思うんですけどね」
かくして沙織先輩の無実は晴らされた。
と言うか無駄に夢衣が彼女に対して疑念を持っていただけなので、最初から犯人扱いするのは酷く失礼な話ではあるが……。
沙織先輩はそのことに関しては特に思うところはないようで、ほっとため息を吐くとまたいつもの調子で賑やかに軽口を叩いてくる。
「はぁ、しかし。妹無が悪夢だなんて、お前ら二人も何があったか知らないが大変だなぁ。会話ができるタイプか。さしあたって害はなさそうなのか不幸中の幸いだな。――ああ、言わなくていいぞ。どうせろくでもないことなのは分かる」
「ふふふ、とびっきりに最悪でしたよ」
「ゆ、夢衣ちゃんはいい子ですよ。沙織先輩」
「まぁ、そうなんだけどなぁ。私は悪夢に関して直接はあまり知らないんだ。会話が出来るのも初めて見た。いや、悪夢を見るなんてこと自体がそうそう無い経験なんだけどな。ぜひとも"団体"に協力してほしいよ」
ちらりと僕を見ながらそんな提案をしてくる沙織先輩。
流石調査員と言ったところか抜け目はないようだ。だがそれを判断するのは僕の仕事ではなく、夢衣の気分次第なのでおおよそ答えはわかりきっている。
「夢衣はお兄ちゃんと一緒にいるので無理ですね」
「沙織先輩の"団体"には、夢衣と似たような人は居るのですか?」
わかりきった答えが夢衣の口からもたらされるのを確認しながら、ふと思いついた疑問をぶつけてみる。
話を出来る悪夢を初めて見たと沙織先輩は言っていた。結構その様な存在はいるのだろうか?
もしいるとしたら、それはどんな存在なのだろうか?
興味が湧いた。
「どうかなぁ? 私も"団体"の全部を知っているわけじゃあ無いからな。けどまぁ悪夢と出会った人間は大抵ろくな結末を迎えないからな。安定している奴は奇跡に等しいんだ。特に会話が出来る奴はな」
……やはり、夢衣は珍しいケースだったのだろうか?
とすればあの思い出したくない記憶、"芸術作品"の様な存在が悪夢の基本的なあり方で、この場で僕らを捉えている"幸福論"もさほど変わらぬものなのだろうか?
だとすれば、なぜ夢衣は僕も元に来てくれたのだろうか?
――僕にそんな価値があるのだろうか?
「ほえ~。悪夢って、そんなものなんですか? 沙織先輩」
「そうだぞ! 悪夢ってのは場合によっては街一つ平気で飲み込む位の影響力を出すんだ! あたしは心底ビビったね! と言うか今もビビってる。だってここには学園祭を繰り返させた原因となる悪夢と、そしてお前の妹の姿をした悪夢が居るんだからな!」
「ほわぁ……。でもでも、夢衣ちゃんはいい子だから大丈夫ですよ!」
「夢衣がいい子なのは確定事項ですから。とりあえずは話も終わったことだしこれからのことを考えないとダメですね」
「結局、沙織ちゃん先輩もこの状況については全然知らないってことか。参りましたね」
「うん、まぁ……ってか何度も言ってるけどあたしは唯の調査員なんだよ! なんで妹無みたいなバケモノとエンカウントしないと駄目なんだよ!!」
「毒芹先輩?」
「あっ、いや……そんな、別に悪口言った訳じゃないからな! 怒らないでくれよ妹無」
「夢衣ちゃん、沙織先輩いじめちゃダメだよ!」
「うおー! ほんと夢丘は天使だなぁ! 何かあったらあたしにいうんだぞ。お前だけでも助けて見せるからな!」
夢衣を避けるようにスススと移動した沙織先輩は、まるで愛犬を可愛がるかのように叶ちゃんを抱きしめると、ワシワシと頭を撫でている。
髪をぐしゃぐしゃにされながら、困った表情を浮かべる叶ちゃん。
……僕は二人の様子を無言で眺める。
「でも、どうすればいいんでしょうか? この不思議な現象。もしこのまま毎日が続くとしたら、私たちはずっと取り残されたまま……あれ? もしかしてずっと暁人くんと一緒に学校生活を満喫できる? 毎日が学園祭? 暁人くん、毎日が学園祭だよ!」
「叶ちゃん、落ち着いて」
「今回の悪夢について、沙織ちゃん先輩は何かヒントとなる様な情報はないんですか? どんな小さなことでもいいので、夢衣に教えてください」
「う、うーん? アタシもそんなに悪夢の情報を開示されている訳じゃないからなぁ。あたしの役目はそもそも開示する為の情報収集だし……。目的を終えたら消えるんじゃないか?」
「そんな適当な……」
「でも沙織先輩の言葉は間違っていないよお兄ちゃん。悪夢ってのは存在する目的がある。そこに至る行動は誰にも理解できないものかもしれないけど、謎を解くヒントにはなるかもね」
「逆に言うと、目的を終えるまで絶対に止まることはない。だから、今回で学園祭は終わりって考えないほうがいいぞ、きっと毎回繰り返すよ。悪夢が納得するまで」
付け加えた沙織先輩の言葉や強い断定を含んだもので。
だからこそなぜ彼女がそこまでこの状況に平然としていられるのかが少しだけ気になった。
「けど"幸福論"……か。何が目的なんだろう?」
「さぁな? 現段階では何も分からずじまいさ。唯一わかってるのは、あたしとお前たちが二回目の学園祭を経験しているって事だけだ」
「学園祭かぁ、何か学園祭にあるんですかね? 悪夢だから全て悪意を持っているって訳じゃないんでしょう、沙織ちゃん先輩」
「ん? ああ、そうだな。悪夢が私たちに害を与えるというのは、あくまで人類にとって不都合な行動をとった場合だ。聞いた話によると、完全に人類に有益な効果だけを発揮している安全なものも存在するらしいぞ」
いつの間にか会話は幸福論の目的、そしてこの歪な現象を解決する手段を探すことに向けられていた。
まるでミステリーの推理パートの様な雰囲気に少々浮ついた気持ちになるが、ベットしているのが自分たちの命であることを考えるとそうそうはしゃいでもいられない。
「じゃあ結果として幸福論が僕らにとって安全な存在である可能性もある……と」
「わからないけどな。だから情報を収集するんだ。あたしたちはその為に働いているんだよ」
えっへんと少々自慢気に胸を張る先輩。
子供じみた態度が緊迫した空気を和らげる。
「じゃあ一緒に行動しましょうよ沙織ちゃん先輩。夢衣たちと一緒にいたらきっと何か分かるかも」
「そうですそうです! 一緒の方が楽しいし、私も嬉しいな」
「いや、やめておくよ」
だが子供地味た態度とは裏腹に、彼女からの返答は拒絶の一言だった。
「どうしてですか? その方がいいと思いますけど」
「……あのさ、こう言うと怒られるかもしれないけど、怖いんだ。本当に、二人は目の前の妹無が安全だと思っているけど、あたしはそうじゃない。いつ本性を出して殺されるかと気が気じゃないんだ」
その言葉に僕らは無言になる。
まるで目をそむけていた事実を突きつけられた気分だ。
いやきっと僕は今でも目を背け続けているのだろう。
だから彼女の言葉にも反論することができないでいる。
「別に信用してないって訳じゃない。今までいろんな悪夢の話を聞いてきてさ、その恐ろしさを身体の底に叩きこまれてる。実際目の前でとんでもない死に方をしたやつを何人も見てきたこともある。だから、ちょっと無理なんだ」
「確かに怖いってのは理由は分かります。きっと、本当なんでしょうね。あっ、夢衣今気づいたんですけど、怖い以外にもう一つ理由があるでしょう!」
「…………」
今度は沙織先輩が口を閉ざした。
先程までのふざけた態度が息を潜め、今は静かに夢衣を見つめている。
ゆっくりと夢衣の腕があがり、その白く細い指先がある一点を指す。
「夢衣が近くにいると暴れるんですよね? お腹の中に隠したソレが」
先輩は腹を押さえている。
――今、何かが鳴いた気がした。
「ねぇ、お兄ちゃん。なんで私たち以外に沙織先輩が気がつけたか分かる?」
急な質問に答えを見つけることが出来ず、小さく首を左右に振る。
僕ら以外にこの現象に気がついている人はいなかった。
おそらく、僕らだけが学園祭の日が再度訪れたことに気付けたのだろう。
唯一の例外は沙織先輩だ。
僕はそれに関して、きっと彼女が悪夢専門の団体に所属しているからだと思っていたのだが……。
「悪夢はね、他の悪夢の影響を受けづらいんだ。だからもし悪夢に現実が書き換えられたとしても、同じ悪夢だけはそれに気づくことが出来る……」
なんだ? 何を言ってるんだ?
沙織先輩は"団体"の調査員だ。
普通の人間のはずだ。
だから、そんなことはありえないはずだ。彼女が……。
「ソレ、なんですか? 興味あるなぁ……。少し見せてくれませんか?」
――ギィと、たしかに何かが鳴いた。
「あたしたちは怖がりなんだ。あんまりいじめないでくれ」
パン! と大きな音が耳を劈く。
教室が急に膨大な光に包まれ、バキリと何か硬い金属が折れる音が鳴った。
チカチカする目を何度も瞬かせながら、ようなく慣れ戻ってきた視界を確認する。
先程までそこにいたはずの沙織先輩はおらず、まるで強引に開け壊したかの様にひしゃげた教室の扉だけが転がっていた。
「へぇ……そんな事もできるんだ」
夢衣が楽しそうに呟く。
同時に、彼女がなぜこれほどまでに沙織先輩を警戒していたのかを理解する。
僕らの世界は悪夢の脅威に晒されている。
それは気がつかないうちにその隣にやってき、何の理由もなく僕らを絶望へと突き落とすのだ。
……ゴーン、ゴーン。
また、鐘の音が鳴り響いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます