第十一話 学校司書4年目

 初任3年で異動になるのは公務員の常だ。異動は構わなかった、覚悟してたから。

 でも、私の周りは変わりすぎた。

 まず仕事が増えた。図書館以外の役割もあり、外部との交渉や接触が増えた。小さいところなら、どこもそうだろうと思う。しかし私は、先に言ってもらわないとダメだった。

次に車を買った。田舎はどこも交通機関が少ない。そのため自家用車は必須だ。運転が苦手な私は、それもストレス要因になってしまった。

 兆候はあったのだ。

 自傷が酷くなる。夜眠れない。朝が起きられない。日中貧血になる。


 それが、環境の変化と相まって爆発してしまった。

 あの頃のことは、ほとんど覚えていない。ただ、死にたいという気持ちだけが心にあったのは覚えている。


 学校は小規模で、生徒も職員も優しい人たちばかりだった。私の世界は優しかった。でも、私は気付けなかった。彼等の優しさに甘えていた。

 仕事も減らしてもらって、時間も調整してもらった。それなのに私は、自殺未遂を繰り返した。


 救急車に乗せられて、そして私は入院したのだ。


 入院生活初日は、手続きで酷く疲れた。

それから1週間、「復職出来るか」「仕事を休んでしまった」「また迷惑をかけた」「仕事に戻っても迷惑になるんじゃないか」というマイナスなことが頭の中をグルグル回っていた。

 さらに、精神科の病院には閉鎖病棟があり、私はそこの上の病棟にいた。精神的に不安定だったから、看護師さんの見回りが多い部屋に居たのだが場所が問題だった。閉鎖病棟の中でも、暴れてしまう人がいる部屋の上に私は居た。夜眠れないのだ。

極めつけはこれ。隣の部屋の人が、すりガラス越しに覗いてくるのだ。

さすがに、これには恐怖を感じた。すぐに部屋を変えてもらうよう頼んだ。


 入院中の私の課題は、自分のことを優先して考えること。周りの人の相談ばかり乗っていたし、ごたごたに巻き込まれていたから。

結局、退院するまで治らなかった。


どうにかして、私は「大変な人」が入院してくる前に退院させてもらえた。3ヶ月だった。


 退院後も、私は欠勤や遅刻を繰り返した。

入院したことや仕事を休んでしまったことの罪悪感に苛まれて体調を崩し、また休んでしまうことの繰り返し。

どうにかして治したいと思いつつ、治すことに恐怖を感じていた。今までの自分を否定する気がしていたのかもしれない。


―私は仕事が出来ない―

―全て自分のせいにする―

私のこの考え方は自罰的のようでいて、私を守っていた。自分を「かわいそう」って思っていれば良かったし、自分の殻の中に閉じ籠っていれば安全だ。


 私は、自分の仕事について不安を感じていた。その結果として、私は半年間休職することになった。

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