戦いの狼煙
第27話 戦いの狼煙 1/2
「麻生くん、井上くん、碓氷さん。来なさい。うちのクラスからの選抜は三名よ」担任の和子からの厳しい口調での指名。
「待ってください。私たちは?」
「僕たちだって戦える!」凛子とテルが食い下がる。
「足手まといよ。三人とも。来なさい」
空気は、張りつめていた。
林間学校二日目。
俺は気付いた。看護婦、と言う単語に踊らされ過ぎたな。学生だろうが幼女だろうが看護婦だろうが、女は女だ。
早朝覚醒して、テルと二人でおしっこに行った俺は、水飲み場で談笑する看護婦たちを発見した。
「あの学年主任のセンコー、すげーヤラシイ目で見てくる。超サイアクー」
「先生って言っても病院と違って、ただの教師だしね。マジウケる」
「どうする? ああいうのが案外イイアソコ持ってたら」
「あんた発想ヤベーよ。ふふっ。それより聞いた?」
「なに?」
「奇人って呼ばれてる子が学生でいるんだって。そいつ、うちらのこと狙ってたらしいよ。顔が良いのに包茎なんだって」
「包茎とか、手術しろってーの。しかも学生? 身の程知らなすぎ」
「でもイケメンで仮性。ちょっと萌えない?」
「趣味悪いー。ちなみにそいつの名前は?」
「麻生って言うんだって」
「あっ、そう」
「サム過ぎ~」
「あははっ」
その時、やつらが俺たちに気付く。
「あ、あら。おはようございます。良く寝れた?」
「きえええぇーーー!」
俺は顔を隠してやつらのお乳を揉み、パジャマの上からマンペチ(マンコをペチっと叩く)をして、振り返る事なく駆け抜ける。
「あ、あれ。例の麻生じゃないの?」看護婦の片割れが言う。
「遠藤さん、振り向くな。顔を見られる」俺言う。
「分かった、若田さん」テルは言いながら泣いている。
駆け抜けた、あの青春の日々を。
「凌いだな。あれがナースエンジェルの実態か」
「今度会ったら、ケツに顔を埋めてやりますよ」
「泣くな。お前は男の子だぞ」
「うん。うんっ!」
何故だか無性に、俺は実母の愛に触れたくなった。
「えー。今朝、ボランティアで来ていただいている看護師さんが、何者かに襲われました。襲った生徒の名前は若田さんと遠藤さん。みなさん、知っている事があれば先生に話してください」和子が口を開く。
うわさを流したのは、他でもない俺だ。あの看護婦二人、必ず血祭りにあげてやる。
「わ、私たちはもういいんです。やだわ、こんな大事になるなんて」
「そ、そうですよね。襲われたと言うのは大げさですわ。ちょっと肩と肩がぶつかったくらいで…」
「いえ。我が校の失態は正さねばなりません。女性とは宝だ。許せんな。若田さんと遠藤さん」学年主任のオヤジが、本人、漢気を勘違いして息巻く。
「せんせー。その人たち言ってました。学年主任のオヤジに目で犯されたって」テルが声を変えて言う。
「いいチンポがこよなく好きみたいです。仮性は人間じゃないって言ってました」俺も声色を変える。
その声を聞いて、恐らく全男子の半数が怒りの目で看護婦を見る。計画通りだ。必ず地獄へ送ってやる。
「せ、先生はもちろん亀頭が露出しているが、真実ならそれは由々しき問題ですね。本当ですか、お二人ともっ!」学年主任は何故か泣いていた。
「ま、まさか。私はむしろあの皮の感触が好きなくらいで。それに、恥ずかしがってる男の子って、ちょっと可愛いでしょう?」はんなり。
い、いかん。ターゲットはかなりの遣い手だ。包茎男子の喜ぶツボを知っている。
「そうですか。では真性は?」俺は負けじと、再び声色を変えて問う。
「真性って神話じゃないの?」看護婦が虚を突かれ、思わず言う。
その時、テルが立ち上がった。
「僕が遠藤さんだっ! お父さんをイジメるな! うわあーーーん!」
テルが突撃して、看護婦のケツに顔を埋める! あいつ、ハジけ過ぎだ! 俺の計画があれするだろう。
「湯本くん。やめなさいっ! 自分が何をしているのか分かっているの?」
「アリアリアリアリアリアリっ!」
「だ、誰か。そこのブチャラティを止めてっ!」
こうなれば仕方ない。俺は覚悟を決めた。
「テルよ。己が欲望に負けて痴漢の真似事か。俺は全ての生きとし生ける美しい女性の味方だ。死ぬがいいっ!」
テルの背中にドリルパンチを決める。テルはくたくたと身を崩し、そして気を失った。
「大丈夫ですか、レイディー。わたくし、麻生将があなた方を守ります」
「あっ、若田さんだ」
「そうだよ。こいつだ。こいつ若田さんだよ」
「ちょ、ちょっと待て。今助けてやっただろう」
その時、どこからともなく声が聞こえた。
「ワカタ! ワカタ!」
なんだ? 何が起こったんだ?
「ワカタ! ワカタ! ワカタ!」
気が付けば大合唱だ。ワカタコールが部屋を包む。
「フレー、フレー、ワ・カ・タ! 包茎の敵を倒せ!」
応援を力に。俺はヤリマンと対峙する。
「俺が若田だ。ノリでAV出演をOKして中出しされて泣き寝入りしてそうなお前たちに問う。愛とは何だ? 快感が全てか? そうではない。一人の異性を想い、慈しみ、そして育む。それが愛なのではないか」
「でも、あんたも乱交温泉旅行とかあったら行くでしょ?」
「行くな」
「でしょ」
「ああ。俺が間違っていた。お前たち! モテないからって徒党を組んで女神たちを責めるなっ! こいつらはピュアなんだ。ピュア過ぎて理解されないだけだ」
「シネー、シネー、ワ・カ・タ!」
「シネ、シネ、ワカタ。クタバレ、クタバレ、ワカタ。ワアーー」
一瞬にしてアウェイだ。人の心はかくも移ろいやすいと言う事か。
「ふざけんなぁ! 文句があるならかかってこいやあっ!」
その瞬間、モブたちが
「逃げろ女神たちよ。うおおぉー、俺が相手だぁ」
女神は俺が守る。いや、冷静に考えたら完全に女神たちに踊らされている気がしないではないが、俺のパッションはもう止められない。
「今日こそ、奇人を殺せ! 怯むなっ! あのアホに地面にキスさせてやろうぜ」
待て、指揮をとってるの太一じゃないか?
「海を裂き荒らぶれ、悪魔水龍、ミニっ!」
「あいつ正気か! よりによってリヴァイアサン召喚かよ」「しかも教師の前で堂々と校則違反しやがった」「違う! 見ろっ!」「ち、チンコ出しやがった。どこが悪魔水龍だ、ポッキーじゃねーか」
「くたばれえええ」俺は吠える。
「あいつアホどころじゃないぞ。ほんとに社会に適応できないタイプの奇人だぞ」
襲いかかってくるモブたちをちぎっては投げ、ちぎっては投げする。
ああ、超楽しい。しかも俺が暴れるたび、右に左に亀さんが揺れる。それを女神たちが見ていると思うと余計に力が湧いてくる。
「米倉教諭、どうするのだ。このままではダーリンは何をするかわからんぞ」氷雨が涼子に言う。
「これでエーテル使い出したら引っ叩いてでも止めるけど、まあ大丈夫なんじゃないの。みんな分かってて遊んでるみたいだし」
「しかし、このままいくとダーリンは悪者のまま死ぬな」
「あんた、案外麻生の事分かってないのね」
「え?」
「あのまま行けば、あの看護婦たち、晒しものよ。でも麻生が暴れ出したことでそれもうやむや。これで良かったのよ、きっとね」
「ダーリン」
「多分あのアホはそこまで考えてないけどね。あんたがしっかり、手綱を握ってあげなさい」
「米倉教諭。忠告感謝する」
「いえいえ」
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