Alicegame
樹野蒼音
1章 アリスゲーム
いつからこんなんだったのだろうか?
仕事でもミスをして怒られる。体に力が入らない。頑張ろうと思っても頑張れない…。
嫌だなぁ…こんな生活…。
例えどんなに頑張ったって怒鳴られ、貶され、嘲笑われるーワラワレルー。
最初は辛い気持ちを隠すために笑っていた。
まだあの時は笑えてたのに…。
その笑顔さえ、へらへらしてると怒られた。
ー誰か助けてー
なんて思っていても誰も助けてくれない状況が苦しくて…。
いっそ死んでしまえたら…そう考えていても勇気すら…自ら死ぬ勇気すらないまま夜が明ける。
…あぁ、この世界は私には残酷過ぎる。
もう嫌…。
嫌だ。
嫌なんだよ…。
もうこんな世界なんて…
“ナクナッチャエバイイノニ”
…。
………。
……………………………………………………………………………………。
「…っは!!」
バッ!!
悪い夢を見た……気がする。
胸が抉られるほどに苦しくて苦しくて悲しくて…。
そんな悪夢。
乱れだ呼吸を整えながら時計を見る。
現在時刻 午前一時。
…なんと微妙な時間に起きてしまったものだ…と私はフッと自分に笑った。
寝間着は汗でびっしょり濡れてるし、涙のせいで目もグショグショだ。
「あーあ…」
しかしどうしてこんな夢を見てしま…。
「あぁ……そうだ」
夜が明けるのが怖いからだ。
夜が明けてあの場所に行きたくないから…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『有栖川!!お前まだ仕事おわらんのか!!本当とろいな!!』
『すいません…』
『なんかその態度は!?ぶすくれよって…!!お前なんかいてもいなくても一緒だ!!帰れ!!』
『え…私…そんなつもりじゃ…』
『まだ口答えするか!全く女だから甘えてるだろ!!』
『ち、違いま…!』
『いいや!絶対そうだ!!そうに決まってる!!』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『私…頑張ってないんですかね……』
『…もっと頑張ればいいじゃん』
私………………精一杯頑張ったよ??まだ頑張らなくちゃいけないの??
『そう…ですか…』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
私の勤め先は所謂ブラック企業でどう頑張ったって怒られ罵られる。
私はここで…心を失った。
次に夢を失った。希望も未来も全部。
だから嫌なんだ。
もう死にたくて仕方ないのに……なのに……死ねない。
明日…いや、正確には後五時間後には仕事に行かなくてはいけない。
「あーあ、嫌だなぁ…ねぇ?メル?」
私は側にある兎の人形に話し掛ける。
ーーーーーメルーーーーーーーー
キャラメル色をしていたからそう名付けた。
…いい年してぬいぐるみに名前を付けるのもあれだとは思ったが、独り暮らしの私には生憎話を日常的にする人間がいなかった。
そんなときゲーセンで取った兎の人形ーメルー
この子が私の支えだった。
親や友人達に弱音を吐く事が出来ない天邪鬼な私の心の支え。
「ねぇ…メル…もうこんな世界嫌だなぁ…いっそ…」
“別の世界に行けたらいいのに”
ぐらり。
…視界が眩んだ気がした。
《じゃあ始めようか??Alicegameを》
「え?」
《くす。ようこそ“アリス”君がこの物語の…》
《主人公さ。》
……私は意識が深い所に落ちていく感覚を覚えながら
そのまま落ちていった。
Alicegame 樹野蒼音 @kibouwakokoni
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