第44話 天上の戦い、時空を超えて

「―――天使と悪魔の戦いですか?」


  <常世岐姫命とこよきひめのみこと>の話を聞き終わったライトは半信半疑ながら何とか飲み込んだ。

 すでに過去の世界に飛ばされているし、実感はないとはいえ、そんなこともありそうに思えた。


「その天上でのその戦いのために、私は<予言の戦士>を集めないといけないのよ」


「<予言の戦士>って、何人ぐらいいるんですか?」


 ライトは興味本位でちょっと訊いてみた。


「108名いると言われているわ。安倍清明様の予言書によれば」


「え? 安倍清明? それはかの有名な陰陽師の?」


 安倍清明はライトの時代にはもはや伝説であったが、スマホゲームのキャラクターでは頻出するので意外と馴染み深かった。


「そうです。ちょうどここは京都ですし、今夜にでも清明神社にでも行ってみましょうか」


「はい」


 ライトは観光がてらの軽い気持ちで返事をした。





    †





「清明神社、確か、ここには<時鏡タイムスタンド>があるはずんだけど」


 <常世岐姫命とこよきひめのみこと>が独り言のようにいう。

 清明神社は京都の堀川通り沿いのこじんまりとした神社である。

 一の鳥居、二の鳥居とくぐった右手に石蓋いしぶたに五芒星が刻まれた清明井がある。

 安倍晴明が念力で水を湧出させたという井戸だが、先程からその辺りで何かを探してるようだ。

 その光景は金髪碧眼の幼女が月明かりの下で遊んでるように見えた。


 ライトはただぼんやりと月を見つめていた。

 今日は満月である。

 ライトが視線を戻すと、目の前に黒髪に十二単衣ひとえにミニスカという何ともきわどいスタイルの少女が立っていた。


(お久しぶりです。<常世岐姫命とこよきひめのみこと>さま、雛御前です)


 その声はライトの頭に直接、響いた。

 思念通信テレパシーというやつかももしれない。 


(式神の雛御前殿か。清明様はどこにお出かけかな? 現世に気配が感じられぬが)


(はい、今は飛鳥時代におられます。私は関ケ原に)


(ほう)


 <常世岐姫命とこよきひめのみこと>の桜色の双眸が妖しくきらめく。


(つきましては<常世岐姫命とこよきひめのみこと>さまに助力をお願いしたいのですが)


(なるほど、<時鏡タイムスタンド>はそなたの首にかかってるようじゃな)


 雛御前の首に不思議な光を放つ鏡がかかっていた。


(ライト君。どうやら関ケ原に行かねばならないようじゃ)


(え?)


 <常世岐姫命とこよきひめのみこと>と出合ったばかりに、数奇な運命に翻弄されるライトであった。




    †




(あれが<黒騎士ブラックナイト>じゃ。心してかかれ、ライト君!)


(はい!) 


 体長数十メートルの黒い巨大人形兵器がライトのSSSRトリプルエスレアクラスボトムドール<紅>のモニターに映っている。

 ライトは関ケ原へと時空転移していた。

 眼下には無数の人型機動兵器がぶつかり合う、戦国時代を終わらせた関ケ原の戦いとは似ても似つかぬ異形の戦場が展開されていた。

 史実とはまったく違う、信長と家康が人型機動兵器で決戦した関ケ原の戦いにライトは参戦することになった。

 






(あとがき)


「安倍晴明と安東総理のやり直し転生譚」の関ケ原の戦いに繋がっていくお話になります。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054880205796


「魔導天使~グノーシスの黙示録~」にも繋がっていくお話です。https://kakuyomu.jp/works/4852201425154959922 

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