夏、放課後、教室、夕陽。

作者 ろばーと。

青春はままならないものなのだ、そう、天気と同じように

  • ★★★ Excellent!!!

【総評】
青春はコーラのような口溶けだが、コーラのようには甘くない。
人と人の関わりの難しさと、十代の犯す過ちの痛みを丁寧に描いた作品。

【文章】
これが処女作とのことだが、全く信じられなかった。
確かに校閲が存在しない小説であるだけあって所々気になる表現が散見されたが、総じて心情描写、情景描写ともに過不足を感じさせず、非常に読みやすかった。

【人物】
ひとりひとりの性格が立っており、なおかつキャラ化し過ぎたわざとらしさがなく、それぞれがかっこよくて可愛らしい。
特に台詞回しのセンスの良さはどことなくおしゃれでありながら、もしかしたらこんな会話をしている学生もいるかもなぁと思わせるほどのナチュラルさ、こなれ感があった。
キザったらしかったり自意識過剰が過ぎて読み手の反感を買ったりしないバランス感覚は見事という他なく、非常に楽しく読ませていただいた。

【構成】
青春ものとして、また推理ものとしてみた場合、これらの融合性は高くないと言わざるをえない。
まず、推理小説としてみた場合、この作品の構成は決して上手いとは言えない。伏線に関しても少し後出しだったのでは、と感じられる箇所がある。だが、これはこの物語の構成において簡単に修正できそうな(主観で申し訳ないが)部分であるため、それほど瑕疵とは感じられないし、おおよその伏線は丁寧に張り巡らされているため、アッという驚き、そして、そうか、と言う納得は確約されるだろう。
また、青春・恋愛要素を描くために書かれたシーンは推理小説としてみた場合贅肉として感じられ、この辺りで読者の頭に物語は正しく舵を取られているのだろうか、という疑問が浮かぶ可能性がある。
しかし、他の方も書かれているように、まわり道なのかもしれない。このまわり道こそが作者の〝持ち味〟であるように思う。

この作品を青春ものとしてみた場合、構成は見事という他ない。
毎日主人公が飲んでいるコーラの存在は、最後まで読み終えれば、読み手の胸に必ずやなんらかの感動を呼ぶであろう。私はなぜだかすごく切なかった。
ひとつひとつの小物、天気を用いた比喩表現、描写は美しい面、醜い面を精緻に描き出し、主人公の周囲に魅力的な美少女が集うのも無理なからぬことだと思わせる。
物語の中に散りばめられた伏線と、それらが回収された時に意外な真実、そして罪の重さが見えてくる。最後に罪に対して示される回答と、主人公達が出した回答に関わる問いは、実は冒頭からしつこいくらいに読者へ投げられ続けており、故に、読み手の心に迫って来る構図となっている。これは、なかなかおめにかかれないクオリティである。ぜひとも、この感覚を味わっていただきたい。

【プラスα】
クラスメイトの自殺の謎を、男女コンビで探るというカクヨムで何度かお見かけした設定の物語であったことはやや残念である。だが、その中でどれが一番好きか、と問われれば、私はこの作品をあげたい。美しくも醜い青春をコーラを飲むたび、黒い炭酸の甘ったるさや喉越しのピリピリした痛みや口触りに、思い出すと思う。
ラストで描かれる決断と主人公達が背負う痛みに、作者様の、作品・読者へたいする情熱と真摯な人柄を感じた。
好みの作品であるので、星をひとつ多めにつけさせていただくのは許して欲しい。

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