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「……やっぱり、ここにいた」


 いつもは、ぎょっとするほど高い背が、丸まっている。


 地球の裏側まで行けそうなほど、ずーーんと落ち込んでるような、神無崎さんを見つけたのは、昨日、二人でお昼を食べた場所。


 学校の柵をくぐって越えた海の見えるベンチ、だった。


 大きな木の机に頬杖ついている神無崎さんの隣に座れば、彼は、力無く吠えた。


「……なんだよ、てめ。

 ついて来るな、って言っただろーが」


 殴られたのは、蔵人さんの方なのに、傷ついたのは、神無崎さんの方みたいだ。


 低い、地を這うような声は怖かったけれど、本当は一人にしないでくれ、って言っているように聞こえる。


「宗樹には来るなって言ったけど、わたしには言ってないもん。

 それに、何だか話があるように見えたし」


「……くそ」


 神無崎さんは、吐き捨てるように悪態をつくと、陽の傾きかけた空を見上げた。


「悪りぃな~~

 蔵人の言ってたことは…………本当だ。

 せっかく追っかけて来てくれてもよ~~

 お前を、オレの本命の彼女にゃ、できねぇわ」


「べ……別にっ!

 神無崎さんを彼氏にする気は、全く無いのでお構いなく~~」


「ちぇ」


 言って神無崎さんは、自分の頭をバリバリと掻いた。


「やっぱり、西園寺の相手は宗樹、だよな~~

 どー考えても、横から割り込んで来たのはオレの方か……」


 宗樹の『世界が終わった』ため息に負けないほど大きなため息を深々とついて、神無崎さんが言うのを聞いて、わたしの首は自然と傾く。


「なんで、本命さんがいるのに、わたしと付き合う気になったの?」


 今まで相当女グセが悪かった……って宗樹から聞いてたし。


 本当に好きな人が手に入らないのなら、その代わりのヒトを必死で探していたに違いない。


 わたしも『恋人』じゃないけれど。


『オトモダチ』を探して、いろんな部活に関わりを持った結果が、あの部活勧誘騒ぎなんだもん。


 神無崎さんの気持ちは、判る……と思う。


 けれども。


「わたしと付き合うために、今までの女友だちを全部整理したって、聞いたよ。

 それは、かなり本気だって事だよね?

 好きじゃないはずのわたしのために、なんでそこまでやる気になったの?

 ……そして、神無崎さんの本当に好きなヒトって、誰?」


「西園寺のコトは嫌いじゃねぇ。

 オレの素顔をきちんと見て、話をしてくれるし、ここまで追いかけて来てくれたくせに『彼氏にはしない』と言いやがる。

 この神無崎裕也サマをこんな風に扱うなんて!

 面白いよなぁ。

 お前のコトが好きだったら、本当に良かったのに」

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