97
「……やっぱり、ここにいた」
いつもは、ぎょっとするほど高い背が、丸まっている。
地球の裏側まで行けそうなほど、ずーーんと落ち込んでるような、神無崎さんを見つけたのは、昨日、二人でお昼を食べた場所。
学校の柵をくぐって越えた海の見えるベンチ、だった。
大きな木の机に頬杖ついている神無崎さんの隣に座れば、彼は、力無く吠えた。
「……なんだよ、てめ。
ついて来るな、って言っただろーが」
殴られたのは、蔵人さんの方なのに、傷ついたのは、神無崎さんの方みたいだ。
低い、地を這うような声は怖かったけれど、本当は一人にしないでくれ、って言っているように聞こえる。
「宗樹には来るなって言ったけど、わたしには言ってないもん。
それに、何だか話があるように見えたし」
「……くそ」
神無崎さんは、吐き捨てるように悪態をつくと、陽の傾きかけた空を見上げた。
「悪りぃな~~
蔵人の言ってたことは…………本当だ。
せっかく追っかけて来てくれてもよ~~
お前を、オレの本命の彼女にゃ、できねぇわ」
「べ……別にっ!
神無崎さんを彼氏にする気は、全く無いのでお構いなく~~」
「ちぇ」
言って神無崎さんは、自分の頭をバリバリと掻いた。
「やっぱり、西園寺の相手は宗樹、だよな~~
どー考えても、横から割り込んで来たのはオレの方か……」
宗樹の『世界が終わった』ため息に負けないほど大きなため息を深々とついて、神無崎さんが言うのを聞いて、わたしの首は自然と傾く。
「なんで、本命さんがいるのに、わたしと付き合う気になったの?」
今まで相当女グセが悪かった……って宗樹から聞いてたし。
本当に好きな人が手に入らないのなら、その代わりのヒトを必死で探していたに違いない。
わたしも『恋人』じゃないけれど。
『オトモダチ』を探して、いろんな部活に関わりを持った結果が、あの部活勧誘騒ぎなんだもん。
神無崎さんの気持ちは、判る……と思う。
けれども。
「わたしと付き合うために、今までの女友だちを全部整理したって、聞いたよ。
それは、かなり本気だって事だよね?
好きじゃないはずのわたしのために、なんでそこまでやる気になったの?
……そして、神無崎さんの本当に好きなヒトって、誰?」
「西園寺のコトは嫌いじゃねぇ。
オレの素顔をきちんと見て、話をしてくれるし、ここまで追いかけて来てくれたくせに『彼氏にはしない』と言いやがる。
この神無崎裕也サマをこんな風に扱うなんて!
面白いよなぁ。
お前のコトが好きだったら、本当に良かったのに」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます