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二週間後の歓迎会。
最初はもちろん、Cards soldierは蔵人さんを入れて歌うなんて、考えてなかったから、練習済みの今までの歌だけ歌う予定だったらしい。
特に緊張することも無い、軽いイベントのはずだったのに。
入学式後の部活紹介みたいに会を盛り上げ、最適な場面で舞台(ステージ)を他の方々に譲って去るつもりだったのが、もう一曲追加され……なんて。
ステージの企画をやりなおしている宗樹の横顔を、やっぱりカッコ良いなぁ、と眺めれば。
突然。
きゅーーっって、心が締め付けられように痛んでビックリした。
なんで!?
なんで、心が痛むの?
今まではともかく、これからは執事の真似事を『イヤイヤ』西園寺のためにやって貰うんでなく。
好きでわたしの世話を焼いてくれるっていうんだもん。
にっこり笑顔でよろしくお願いします! っていうならともかく。
申し訳ないなんて謝ったり、ましてや宗樹の境遇に心を痛めることなんて、無いはずなのに!
どうやら、その変なドキドキ感は、宗樹を見ていると起こるみたいで。
宗樹に見つめられると、もっとひどくなるようで!
「ああ、来たな、お嬢さ……西園寺。
早速作曲頼む」
なんて。
当たり前の言葉で、フツーに声をかけられただけなのに、心臓が飛びはねる。
でも、もっとひどくなったのは、井上さんが、宗樹の近くに寄って、彼らの話し合いに参加した時だった。
井上さん、マネージャーなんだから、二人の話しに加わるのは当たり前だよね?
確かにCards soldierの中でクローバー・ジャックはダイヤモンドキングより好き! とは言ってたけど、井上さんは積極的に自分アピールとかして無いし。
宗樹だって、神無崎さんと話しているのと同じ感じだもん。
なのに、なんでこんな気持ちになるんだろう?
「理沙。理~沙。作曲、しよ?」
しかも!
宗樹の横顔から目が離せなくて、ついつい見つめてしまうことに、蔵人さんが声をかけてくれたおかげで、やっと気づくなんて。
その蔵人さん自身。
宗樹たちと一緒にこの部屋にいたのに、声を賭けてくれるまで、目にも入らなかったなんて。
「~~ダメかもしれない……」
「僕の歌を書き写すのってやっぱり難しい、かな?」
わたしのつぶやく声に、こたえてくれたのも、蔵人さんだった。
一度はステキな歌だって言ってはくれたけど、良く聞いたら実はつまらない歌だったらどうしよう、なんて。
困った顔の天使が、更に困った顔をしてる。
うぁ、誤解!
思わずつぶやいた声を、蔵人さんに聞かれて心配されちゃった!
わたしは、どーーんと浮かんでた宗樹への想いを首を振ってうち消すと、蔵人さんに笑った。
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