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だいぶ早く家を出たから、宗樹と二人で君去津についた時は、多分、誰も来ていないだろうって、思えるぐらい早い時間だったけれど。
蔵人さんの歌を聞いて色々やってたから、授業時間が迫ってる。
それでも、わたしは、自分の考えが合っているかどうか、すぐに知りたかったんだ。
自分の耳は信じてるけど、やっぱり一度、正確な音が知りたい。
朝のホームルームが始まる前に、ピアノの前に蔵人さんを連れて行きたいんだけれど……!
新入生のわたしが、勝手に使って良いピアノの当てなんて、無……………あった!
第三音楽準備室!
Cards soldierの部屋なら、問題無いかな!?
昨日のお昼休み。
井上さんに、準備室に放り込まれた時、ちらっとアップライトのピアノを見かけたような気がする。
多分、楽器のチューニング用だけど、そのピアノを少し使ってもいいかな?
Cards soldierの一大事だもん!
一昨日のステージのもめ具合を見たあたり、神無崎さんと蔵人さんの相性が良いのか、果てしなく謎だけど!
ピアノぐらい心良く、貸してくれるよね!?
「先輩! 今すぐ、ガッコ行きましょう!」
わたしが叫ぶと、蔵人さんは『うん、是非……』って言いかけ、すぐ困った顔をした。
「多分理紗は僕と一緒に登校しない方が、いい……」
「なに、宗樹みたいなこと言ってるんです!
蔵人さんは、まだCards soldierじゃないでしょう?
何があるって言うんです!」
蔵人さん、何か言いかけたけど、無視!
だって、歌がちゃんと曲になるかどうかなんて、本人がいなくちゃ意味ないもんねっ!
まだ、何か迷っているような……っていうか。
ちょっと引き気味な蔵人さんの手を引っ張らん勢いで、彼よりも先に校門にかけ込もうとした時だった。
うっわ~~
今日は最初から校門の近くで、わたしを自分の部活動の部員にしたい勧誘の皆さまが、ずらりと並んで待ち構えてる!
わたしが、すっっごく早く家を出た理由って、このヒト達をかわすため、だったんだけど。
君去津駅ではしっかり覚えてたこと、蔵人さんの歌で忘れてた!
神無崎さんなり宗樹なりが来ると、また蹴散らされるから、かどうか。
皆さん、短期決戦の構えで待ち構えている。
えぇ~~んっ!
わたしに向けられる
全員にこにこ笑顔なのに怖いよ~~!
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