41
「じゃあ、今日はあたしが買いもの手伝ってあげる!
どんな種類のパンが好き?」
「うんっと、一番好きなのはタティ・スコーン。
最近ブリオシュも気に入ってて……」
「タティ……? ブリオシュ?
ごめん、あたし、ソレ初めて聞いた。
……ん、できっと、購買部にも売って無いと思う」
「あっ……あああっと、良いです、あるモノなら何でも!
……っていうか、買えるモノだったら……なんでも」
いつもお買物はカード払いで、現金は持ち歩かないものだから、今お財布にあるのも、電車代と少しぐらいだ。
帰りも電車に乗るつもりなら、行きに宗樹に立て替えてもらった分ぐらいしか……無いんだけども。
「でも、こんなにちょっとでパン、買えるのかしら……?」
ドキドキしながら、井上さんに見せたら……なぁんだ、全然大丈夫よと明るく笑った。
そして、今買った自分の分を持っててって、わたしに預けると嫌な顔一つしないで、人ごみの中に飛び込んでゆく。
さっきよりも、絶対お昼を買いに来た人、多くなっているのに!
……井上さんて、いいヒトだなぁ。
そして、とても頼りがいのあるヒトだ。
大勢のヒトの間から、井上さんが買って来てくれたのは、クリームパンと、焼きそばが挟んであるパン。
そしてイチゴ味って書かれた牛乳だった。
二人で持って帰って、教室で食べたその昼ごはんは、はっきり言うと大したものじゃない。
カスタードクリームのクセにバニラビーンズが一粒も入ってなかったり、油っこい麺の詰まったパサパサパンだったりしたんだけど。
それでもマズく感じなかったのは、きっと、わたしがお腹が減っていたことだけじゃなかった。
井上さんとの話が楽しかったからなんだ。
……本当に。
井上さんみたいなヒトが、オトモダチなら良かったのに。
……………
………
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます