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「まさかまさか! ありませんって!」


 わたし、激しく手を振った。


 だって、本当に今日が初対面みたいなもんだし!


 じたばたしているわたしに、ふーんと息をついて、井上さんは、話を戻した。


「ま、いいや。

 そんなわけで、実質的なマネージャーやスケジュール管理はジャックには及ばないけどさ。

 彼が忙しい時のお手伝い、とか。

 メンタル面で少しぐらいなら、支えられるヒトになれるかもって」


 ……へ……え……って!


「……でも、精神面メンタル支えるって、普通のマネージャーさんよりなるの大変なんじゃ……」


「ところが、そうでもないのよね~~

 特に、あたしに限っては」


 井上さんは、ちょっと人の悪く見える笑い方をした。


「身内の知り合いをたどれば、Cards soldierのすぐそばに行くのって、簡単よね?」


 ……えっと、それって!


『クローバー・ジャックの幼なじみ』のオトモダチです~~とか言って……わたしを利用して近づくつもりだってこと!?


 井上さんって悪い人……には、見えないんだけど。


 もし、ジャックに近づくためだけに、わたしに近づいたのなら、イヤだなぁ……


『あんたなんてただ利用しただけ』って言われるのが怖くて、何も聞けず。


 固まるわたしの手を、井上さんが取った。


「だから、西園寺さんも一緒に軽音部行かない?

 ダイヤモンド・キングからも『来い』っていわれてじゃない」


 ……うぁ、それ、言っちゃう?


 オトモダチ同士、部活を見て回るのは楽しいけれど、これは何だか違う気が……


 わたし自身のコトなんて興味なく。


 やっぱりCards soldierに近づくためのオトモダチごっこかなぁ?


 何だかすごく悲しいのをこらえて、わたしはふるふると首を振った。


 オトモダチって、同じ趣味のヒトの中から見つかるものだよね?


 井上さんがわたしの『本当の』オトモダチになってくれないのなら、部活に入って、新しい誰かを見つけていこう……って思った。


「宗樹からは、軽音部に来るな、って言われたし……やめとく。

 ……でも、軽音部以外でいくつか見ておきたい部活はあるから午後は残ろうかな?」


 井上さんに、どうしても一緒に行くの! とか言われないウチに。


 部活、違くなるけど、残念ねってににこにこ笑いを張りつけたまま。


 じゃあ、これでさよなら~~と、彼女の視界から、静かに離れようとしたんだけど……


 井上さんは意外にも、そう残念がらず『そっか』とあっさり肩をすくめた。


「じゃ、部活別になるのは残念だけど、お昼ぐらいは一緒にどお?」


「まあ、お昼くらいなら……」


 心のウチはともかく、名目上『オトモダチ』になった以上、ぼっち同士背中向けて食べるのも、確かに変~~

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