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思わずつぶやく、わたしの袖を、誰かがつんつんつついているのに気がついた。
見れば。
さっきの小柄の女の子が、目をきらきらしい星にして、わたしを見つめてる。
「ね? 今の説明して?」
……どうやら、わたしの嵐は過ぎ去っていないらしい。
「……せっ……説明しろって言われても……」
たじたじと後さずりするわたしを彼女は逃がしてくれなかった。
「どうして、メンバーと仲良いの?
ダイヤモンド・キングを振ったって……付き合ってくれ、って言うのを断ったってことでしょう?
なんだってそんな、うらやましい……じゃなかったバチアタリなコトを!」
バチアタリって! そんなコト言われたって!
「神無崎さんは、多分、別に本気でつきあえって言ったんじゃないよ?
そもそも、今日初めて会ったし……からかっているだけだと思う」
「ふーーん? じゃあ、クローバー・ジャックの方は?」
「う……ううんと……」
別にウチのコト、絶対秘密にするわけじゃないけど……
普通の家って、使用人さんたちを束ねる執事どころか、メイドさんとか運転手さんとか料理作ってくれるコックさんっていないよね?
ど~~考えても普通じゃない以上。
ここでいきなり『
だとしたら、わたしと宗樹の関係って……なに?
いずれ西園寺の『執事』になってくれるって言うのなら。
わたし……宗樹の未来の永久就職先?
うぁ……ダメだ~~
そんなこと言ったら、絶っ~~対、誤解される。
ん~~と、一番無難な関係は……
「えええっと……幼なじみ……かな?」
今日まで、数回しか会ってないし、すっかり忘れてたけど!
そんな苦し紛れの説明に、彼女は納得したらしい。
「そっか!」
と。
にっこり笑うと、わたしの手を取り……言った。
「クローバー・ジャックの幼なじみ、ってすごいね!
あたし、
ぜひ、お友達になってくれない?」
オトモダチ!?
とっても欲しかったその関係が、手に入ったのは嬉しかったけど……!
この流れって、ど~考えても。
『クローバー・ジャックの幼なじみである』
わたしと、友達になりたいっていうことだよね?
それって。
『世界屈指のお金持ちのお嬢さま』のわたしとオトモダチになってくれていた、前の学校の星条学園のみんなと、どーー違うんだろう?
わざわざ君去津に来たのは、そういう損得抜きの『オトモダチ』を作りたかったからのはずだった。
「オトモダチになって」
本当は、井上さんのそんな言葉から逃げ出したかった。
……のに。
結局「うん、よろしくね」って言ってしまったのは。
やっぱりわたし、見知らぬ場所で一人っていうのが淋しかったのかもしれなかった。
………………………………
………………
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