本当は

それから3人は別室で授業を受けていたのだが、毎時間先生が変わるためその度に凛に先生紹介をしていた。

ノリノリな先生や少しウザそうにする先生、無視する先生までいた。しかしそんな先生当たっても凛は

「すみません。早く記憶を戻せるように頑張りますので・・・」

凛は半泣きになっていた。

先生はそんな凛の姿にドキッとしていた。

こうして3人は授業を受けていた。

教室の方はと言うと・・・

担任が上手く誤魔化してくれてるおかげで何とかなっていた。

「あの・・・お2人は教室の方にお戻りになった方がいいのでは・・・?」

凛が遠慮がちに聞いてきた。

「そんなことないよ。凛といたいからここにいのだから心配しないで?」

そう言ったら凛は柔らかく笑って“ありがと”と言った。虐めにあってから1度も笑わなかったのに不意に笑うから誠は理性を保つのにくろうしたとななんとか・・・・・・

たまに凛は頭を抑える事があった。

記憶が戻りつつあるのだ。

しかしなにをしても凛の記憶が戻る事はなかった。心配になった誠と果林は凛を連れて病院に来ていた。

なんで連れてこられたのか分からない凛は困ったような顔でこっちを見ていた。

不安だと思ったので凛は別の部屋で待っていてもらった。凛が出ていったのを確認して

「先生、凛の記憶はいつ戻るのでしょうか」

誠は単刀直入に聞いた。

「そうですね・・・まだ分からないですね」

それはそうだ。凛の記憶が戻るかなんて医者に聞いたってわからない。本人しかわからないのだ。今戻ったとしても嫌な事をまた思い出させるだけなのだから・・・・・・

先生と話しを終えて凛の待っている部屋に向かった誠と果林は凛の些細な異変に気づいた。

「凛?何かあったか?」

誠はそう聞いた。しかし今の凛は何も言わずに首を振るだろうと思っていたのに・・・

「別に、何もないよ」

そう帰ってきたのだ。今までとは何かが違うと感じたのは誠だけでは無かった。

それでも“何も無い”と言われた以上これ以上聞くわけには行かなかった。

凛を家まで送った時・・・

「あのさ、もう明日から来なくていいので・・・1人でも学校には行けます」

そう言って凛は家に入っていった。

その光景にびっくりした2人は黙って凛の家の扉を見つめる事しか出来なかった。

「ねぇ明らかに凛ちゃん様子可笑しかったよね?」

果林がそういうのも無理はなかった。

だって確かに様子がおかしいのだから・・・

「明日学校行ったら聞いてみようか。とりあいず朝迎えに行くのは辞めよう」

そういう事にして誠は果林を家まで送っていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る