第268話 経営者・もより・・・その1
経費削減は民間企業だけの話ではない。
お寺だってそうなのだ。
「トコトコ?」
ちづちゃんが以前行ったことのある隣県のスーパーセンターの名称だ。
「スーパーセンターって、業者向けのスーパーみたいなやつ?」
「もよちゃん。当たらずも遠からずって感じだね。いくつかの専門店があって、大きなロットでまとめ買いする分コストが低いって感じかな」
ちづちゃんの説明に納得した。
そして、週末には即行動となった訳だ。
「ごめんね、みんな。年末の忙しい時に」
お師匠は檀家さんにバンを借りて高速を運転する。助手席にわたし、後部席にはちづちゃん、学人くん、空くん、ジローくんといういつものメンバーだ。
年々檀家さんの高齢化と地元離れで都会へ行く人が増えたため、お布施が減っている。
情けない話ではあるけれども、御本尊への供物やらお寺の備品やらなにから節約しないといけない有様だ。
したがって、年末年始の買い出しもできるだけ安くてお買い得な物を、ということでみんなトコトコに荷物持ちとしてついてきてくれた。
まあ、遠足みたいな感じがして楽しいんだけれど。
「もより、買い出しリストは万全か?」
「抜かりないよ。なんなら予算管理もばっちり」
「もよりさん、お寺の収支ってそんなに大変? ・・・て、お師匠ごめんなさい」
ジローくんが言ってしまってからお師匠に気を遣う。お師匠はいやいやと気にしないでというジェスチャーをする。
「ジローくん。老若男女、官民問わずコストのかからないものってないからね。うちもこれからが正念場だよ」
わたしはジローくんに言いながら自分にも気合を込めるつもりで言い聞かせる。
なにせ、わたしが跡取りだ。
お寺を潰したらそれこそ末代までの恥だ。
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