第246話 奇跡の5歳児・・・その4
悪鬼神である近本を呼び出すという真世ちゃんの作業はまるで日常の雑用と同じようなものだった。
「もよもよ、座布団をこの並べ方にして」
「はーい」
「ちづっちは8人分のお茶淹れて」
「8人分?」
「考えないで、作業して」
「はい」
「男の子たちはロウソクの火を絶やさないでね」
「うん、わかった」
日曜の午後。
真世ちゃん、お師匠、それからわたしを含めた五人組の全部で7人が本堂で座布団敷いて車座になった。ご本尊の前に灯したロウソクの火がゆっくりと揺れている。
真世ちゃんはマイペースだ。
「このきんつば、おいしいね」
学人くんは緊張してしきりに真世ちゃんに質問する。
「悪鬼神にどうやって勝つの?」
「さあ。分かんない」
「え。分かんないってどういうこと?」
「どういうこともなにも、そういうこと」
「真世ちゃん、それって出たとこ勝負ってこと?」
「
「そ、そんな」
「学人くん、ごめんね。でもどのみち近本はわたしたち全員をどうにかするつもりだろうから」
「もよりさん・・・」
「学人くん、ほんとにごめんね・・・」
「わかった、いいよ。謝らないで、もよりさん」
真世ちゃんがニタニタする。
「なーんだ。学ちゃんはもよもよのことが好きなんだね」
「いや、違・・・わないけど、その」
「ありがと、学人くん」
「あ。もよもよってやっぱりかっこいい」
「真世ちゃん。一応みんな年上なんだからあんまりからかわないで」
単にお茶を飲んで雑談しているだけ。
これで近本が本当に来るのだろうか。
でも、『来る』と思っていたその認識は間違っていたことに気づいた。
お師匠と真世ちゃん以外の全員がショックを受けた。
時間の境目など無かった。
それが見えたとか見えなかったとかいうこととも全く違った。
近本が座布団に正座して両手でお茶を飲んでいる。
最初からそこにいた、という事実認識をせざるを得なかった。
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