第210話 奈月さんとの上京顛末・・・その6
「器の大きさかあ・・・」
「どうしたのもより。しみじみと」
「奈月さん。まだまだわたしの知らないことが山ほどあるんですね・・・」
「みんな、そうでしょ。わたしだってそうだよ。きっとお師匠だってそうだと思うよ。ところで、真世ちゃん一族とお師匠はどういう関係なの?」
「それが、全くの無関係なんですよ」
「え?」
「会ったこともなければお互いの顔も知らないそうです」
「でも、真世ちゃんのお母さんがお師匠にはお世話になってるって言ってたよね?」
「わたしもてっきり真世ちゃんのひいおばあちゃんとうちのおじいちゃんかひいおじいちゃんが知り合いだったのかと思ったんですけど、それも全然」
「じゃあ、どういうこと?」
「うちのお寺のご本尊と真世ちゃん
「うーん、そっか」
「それぞれのご本尊同士が見えない繋がりでずっと昔から連絡を取り合って人間の長久を守るためのご活躍を、それこそ人知れずやってくださってたんです。わたしたちはそんなことを知ることすらできないほど無力だ、ってことです」
「人間の限界、ってことか・・・」
「でも、わたしは希望が持てました」
「希望?」
「はい。だって、真世ちゃんはまぎれもない人間の女の子です。でも、その子が寿命と引き換えに仏となることが約束されている。わたしのお兄ちゃんと同じように」
「でも、辛いことだよね、それって。特に真世ちゃんのお母さんにとって」
「わたしの母親は兄の寿命に対して結局精神的に耐えきれずにあんなことになってしまいました。真世ちゃんのお母さんには、真世ちゃんが天寿を全うしたあとも幸せになってもらいたいです」
「もより。みんなが幸せになる方法ってないのかな・・・」
「さあ・・・そもそもどんな状態が幸せなのかってことすらわたしには分からないです。ただ・・・」
「うん」
「真世ちゃんとは後五年って思うとただただ泣けてきます」
「・・・もよりとわたしは後何年かな」
「・・・意外と長いかも知れませんよ」
「後八十年ぐらい?」
「嫌ですね、下の世話とかされてる状態になってたら」
「仮にも女子高生がする話じゃないよね」
「女子高生どころか、奈月さんなんてメイドじゃないですか」
「うーん。少子高齢化社会におけるメイドの雇用期間引き伸ばし案でも出してみようか」
「定年は?」
「自己申告で」
「なんかやだなあ・・・」
帰ったら、お盆の準備だな。
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