第179話 プレフルマラソン(その7)
そのまま下り続ける。が、勾配がやや緩くなったポイントでスピード感が若干鈍った。2kmの地点、わたしはストップウォッチをちらっと見る。
「ダメだ! まだいける!」
最初の1kmよりも遅れていた。わたしは自分に暗示をかける。
「大丈夫、まだ限界じゃない、まだぎりぎりより大分手前。わたしはまだ大丈夫。わたしはできる、おりこうさん」
”おりこうさん” なんて言葉が浮かんだことで、くすっと笑いが出た。スピードがまた戻って来る。けれども、まだ試練は続く。
去年転んだ時の左ひざが痛み始めた。
「お兄ちゃん、わたしを使うんなら、もっとラクさせてよ。自動的に足が動くとかさー!」
と、文句を言っても何も変わらなかったので別の事を思い出す。ひざが痛むのはスピードのせいじゃない。フォームが崩れ始めてるんだ。
”走る体を作る” という、プロのランニングコーチが書いた教則本。何度も繰り返し読み込んだので、暗記していた。
”下りは傾斜に対し、体が垂直になるように”
おー、そうだった。そして走るうえでの体幹の基本。”意識としてはおへその下あたりに中心があるような感じ”。
よし! よし! 中央病院の敷地が見えて来た。
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