第160話 とある証明をするナッキー(その1)

 ぽけー。

 今のわたしを適正に表現する擬音がこれだ。

 生徒会長選の不戦敗から早や2週間。世間で言う所のゴールデンウィークに突入してる。


「もよりー」


 お師匠は人使いが荒い。午前中だけで5軒の月参りに行って来たのに、まだ足りないのだろうか。

 いいや、このまま臥せっていよう。


「入るぞー」

「うわっ!」

「何だ?」

「ちょっと! ノックぐらいしてよ!」

「ちゃんと声掛けたし、ふすまじゃノックなんかできんだろう」

「声とふすまを開けるのが同時だったよ」


 仮にも女子高生の自部屋へずかずか無造作に入り込む怖いもの知らずの父親がこの世に存在するとは。


「もより、これ」


 ? お師匠が、ひらっ、とわたしに手渡したのは千円札3枚だった。


「せっかくのGWにぽけーとしてるからな。それでどっかで憂さ晴らししておいで」

「くれるの?」

「貸すだけだと言ったら返すか?」

「いえいえ。ありがとうございます。でも3千円じゃなあ。ヤケ酒も飲めないよ」

「ヤケコーヒーでも飲んでくるといい」

「コーヒーか・・・あ、そうだ。あそこへ行こっと」

「何だ?いい店あるのか?」

「うん。お師匠も来る? メイド喫茶だけど」

「いや、いい」

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