第138話 帰宅部の実態(その1)

「ねえみんな。家に帰った後どうしてるの?」


 放課後、わたしが4人に対して何気なく言った一言。どうやら結構重く響いたらしい。みんな動揺している。


「わたしは・・・お母さんがオータムホテルの仕事ある日は、わたしが晩御飯の準備をしてるけど」


 お・・・さすがちづちゃん。やっぱりね。


「でも、お母さんが家に居る日は何してるかな・・・予習・復習やった後は、小説とか読んでるかな」

「うん。ちづちゃん、読書家だもんね」

「買い物の途中で市立図書館に寄って・・・翌日に返しちゃう、って感じかな」

「うわ、すごいね!」

「ううん、軽い感じの本ばっかりだから」

「そっかあ・・・空くんは?」

「え?僕はね・・・実は最近ちょっとアルバイトっぽいこと始めてね」

「へえー」


 全員で軽く感嘆の声を上げる。


「いや、ちょっと年の離れた従兄が司法書士なんだけど、独立して事務所を構えてね。フルタイムの職員も1人雇ってるんだけど、開業したてで人手が足りないって言って。週何回か手伝いに行ってるんだ」

「うわ、仕事難しいんじゃない?」

「ううん。僕がやるのはコピーとか簡単な文書や表作成ぐらいで。それも2~3時間の補助仕事だから」

「でも、司法書士の仕事って面白そう。相続の話とか、なんだか人生の縮図みたいで」

「うーん。何か先を越されてる感じだな」

「そういう学人くんは?」

「うん、俺はね。たまに、だけど学童保育の手伝いをしてるよ」

「あ!何となく分かる」


 そう。わたしたちは、”花火会”、の時、学人くんが地元の若い衆みたいな感じで結構世話好きな一面を見ていた。


「勉強を見たり、遊び相手になるだけなら自分でも結構できるんだけど、中には深刻な悩みを抱えてる子もいてね」

「うんうん」

「分かるよ。小学生だって1個の立派な人格だからね」


 ちづちゃんとわたしの反応に学人くんが、はっ、という顔をする。


「そうだよ。この間のクリスマスみたいなこと、お願いできないかな?”ほーわ”、してくれたら多分救われる子もいると思う」

「うん。わたしで役に立てるんだったらいつでも言って。ね、ちづちゃんも」

「うん、わたしもその子たちの話を聞いてあげるぐらいしかできないけど・・・」

「うん。ありがとう、もよりさん、千鶴さん」


 さて、ジローくんが残った。

 みんなでじいっとジローくんの顔を見る。ジローくんは、僕?、という感じで自分を指差す。全員で、うん、と頷いた。


「えっと・・・言って、いいのかな?」


 ?自問自答してる。


「あの、引かないでね」

「引く?」

「ちょっと、探偵をやってるんだけど」

「え?」

「え?」

「え?」

「何、それ?」


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