第102話 クリスマス・フィードバック・ブディズム その13
お師匠の異様な雰囲気に呑まれて、その場は1分ほどの沈黙が続いた。真っ先にギブアップしたのはわたしだ。
「なーんだ。せっかくの夏休みなのに、お兄ちゃんが忙しくて話せないから寂しいんだ?図星でしょ、お父さん?」
「うん・・・・そう、だな」
本当にそうだろうとは誰も思わなかったけれども、それ以上はツッコまずに、また料理の話に戻った。
電話はお母さんが受けた。
「?」
お寺のコードレスフォンの子機を耳に当てたまま、右手をぶらんと下げてお母さんは黒光りする廊下に立っていた。
受話器から、”もしもし”、という女性の声が漏れている。
「ちょ、お母さん、大丈夫?わたし、出ようか?」
そう言ってわたしが母の左手に手を掛けるといとも簡単に電話はわたしの手に移った。
「もしもし?」
「あ、上代一志さんのご家族の方ですか?」
「はい、そうですけど・・・・」
「わたし、ケンケーケージブソーサイッカのアマド、と申します。最初に電話に出られた方にもお伝えしたんですが・・・」
「ケンケーケージブソーサイッカ?」
何だろ、それ。
「一志さんと思われる男性がお亡くなりになりました」
「はい?」
「・・・死亡、されたのです・・・」
「え?何ですか?すみません、あなたはどなたですか?」
「すみません。もう一度改めて申し上げます。私は県警本部刑事部捜査一課の
え?え?え?
心の中がそのまま発声される。
「え?え?何ですか、それ。どういう事ですか?16:35て、午後4時35分のことですよね?」
電話の時刻表示を見る。
「10分前じゃないですか?あなた、誰なんですか!?」
わたしの取り乱しに対し、天戸さんはあくまでも冷静だった。
「ご心中、お察しします。もう一度申し上げます。私は県警本部刑事部捜査一課の天戸です。亡くなられた男性がお持ちになっていた財布の中にあった学生証を見てお電話差し上げております。大変お辛いとは思いますが、この男性のご遺体を確認していただきたいのです」
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