第90話 クリスマス・フィードバック・ブディズム その1

 ああ、気付くと師走で、もう少しするとわたしが一年で一番憂鬱な日が近づいてくる。

 極力触れないようにしていたのに・・・


「もよちゃん、そう言えば、誕生日って、いつなの?」

「え?」

「もしかして、もう16歳になっちゃってるとか?」

「いや、そうじゃないけど・・・」

「あ、じゃあ、早生まれだったりする?」

 ちづちゃんには何の悪気もない。分かってはいるけれども”やめて欲しい”というのが本音だ。嗅覚の鋭い他の男子3人も集まってきて、学人くんもちづちゃんを援護射撃する。

「もよりさん、もしかして遠慮して答えないんじゃないの?そんな大げさなお祝いとかしないから安心して。それで、いつなの?」

 ああ、仕方ないか。答えるしかないのか。とりあえず、遠回しに回答する。

「まあ、今月なんだけど」

「え?嘘?」

「・・・ほんと」

「何日?」

 ジロー君も興味津々で質問してくる。

「う・・・下旬かな」

「?曖昧な答えだね・・・あ、分かった!」

 聡明な空くんが軽く浮き立った声を出した。

「ひょっとしてクリスマス・イブかクリスマスなんでしょ。お寺の跡取りだからクリスマスと重なる日が誕生日なんてあまり大声で言えないから、とかなんじゃない?」

「・・・違う」

「え?違うの?」

 今度は、ちづちゃんがとどめを刺しに来た。

「え・・・と、わたしたちって、友達だよね」

「う・・・ん、もちろん」

 ああ、これでは脅迫だ。ちづちゃんは時としてとても怖い対応を取って来る。もう、わたしも万策尽きた。諦めた。

「まあ、師走だよね」

「え?そうだけど、何日なの?」

「まあ、最後の日かな」

「最後って?」

「一年の最後」

「つまり・・・」

「12月31日。大晦日なんだよね」

「あ、・・・ああ・・・・」

「そっか、そうなんだ・・・」

 大晦日。皆が一番忙しく、誕生日などではない別のイベントで大いに盛り上がる日。もし誕生日が元旦だったならば、”おめでたい”ということでまあ、納得できたと思うけれども、大晦日じゃなあ・・・・

 ちづちゃんも、他のみんなも、気を遣って無口になってしまった。

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