20-7
はじき返された盾を見事にキャッチして、そのままヴァンが間合いを詰めてくる。しかし、流石に以前複雑骨折させられたほどの一撃、いくら化け物じみた力を得たとしても、痛いものは痛かった。
「くっそ……いてぇじゃねぇか!!」
青年の怒りの反撃である左の拳をすり抜け、ヴァンの右肩が青年の胸に衝突してきた。
「はぁああッ!!」
肩から相手の弾く能力が発動され、想像以上の威力で青年の体が後方へ吹き飛ばされる――以前戦ったときよりも、ヴァンの動きは鋭い、建物の壁を背中でぶち抜きながら、青年はそう思った。
「て、てめぇ!! 前は手加減してやがったのか!?」
「あぁ、そうだ……しかし、まだ手加減したほうが良さそうか?」
土煙の向こうで、涼しい顔の男が冷たい視線でこちらを見ている。美形だから冷たさ三割り増しで、それが余計に青年のカンに触った。
「……クソがッ!!」
跳ね起きて、今度はこちらから相手に向かって駆け出した。成る程、確かにいつもよりも体が軽いし、自分の体に戻ってからの違和感がほとんどない――つまり、痛覚はしっかりあるし、声もしっかりと出る。心と体が、しっかりと連動している感じ――いや、むしろ体のほうが先行してしまっているのか、まだ自分の力を上手くコントロールできていないのが実状だった。それが原因で、ヴァンにこちらの突進を軽くいなされ、しかも勢いを殺せぬまま、青年は奥の壁に激突してしまった。
「……貴様、私を馬鹿にしているのか?」
「て、てめーこそ馬鹿にすんなよ!?」
しかし現状だと、確かに自分のほうが勝手に動き回って、勝手に自滅しているだけだ。少し、落ち着かなければ――そう思っていると、クールな眼差しで、マクシミリアン・ヴァン・グラントが手招きをしてきた。
「そんなのでは肩慣らしにもならん。真面目に来い」
「……んなろぉおおおおッ!!」
衝動に身を任せるのもなかなか心地よいのだが、このままではヤツの思い通りだ。それはそれで癪なので、怒った振りをして、いや実際それなりに怒ってもいるのだが、ともかく青年は再度男に対して突貫した。こちらだって、以前の自分ではない――そうだ、この力に飲み込まれては駄目だ、制御しないと――青年はヴァンの手前で思いっきり踏みとどまった。
このままいけば、相手のカウンターで綺麗に吹き飛ばされていただろう、ヴァンの手甲が振りぬかれる。しかしこの身は自分の本質そのもの、そもそも自分は正面から相手を倒すタイプでもない、青年はそれを思い出した。
「……間抜けがッ!!」
青年は、自らの腕を構成している筋肉を、繊維状にバラバラにし、相手の拳をかわした。ヴァンの手甲は青年の脇を切り――驚いて呆気に取られている男の顔が、青年の目の前にあった。近さゆえ、殴りにくいので――。
「オラァ!!」
掛け声と共に、青年はヴァンの額に頭突きをかました。ちょうど身長も青年のほうが少し高いくらいなので、いい塩梅の高さだった。
ヴァンは呻いて、その場に沈む。右腕を元に戻し、青年は肘を下へ向けた。
「よっしゃ、トドメ……」
「……がぁあ!!」
ヴァンの頭が、再び上に戻ってきた。恐らく、斥力で地面との反動で加速したのだろう、なかなかすばらしい勢いで、青年の顎にぶつかってきた。青年の頭が、思いっきり後ろにのけぞる。というか、これは生身で喰らっていたら、首の骨を持っていかれていたのではなかろうか。
「いっづ……てめ……え!?」
恐らく相手も頭を痛めてふらついているだろうと思い込んで首を持ち直すと、その期待は裏切られていた。早急に持ち直していたのか、ヴァンはすでに拳を引いて、次の一撃に備えている。
「……舐めんな!!」
青年は直感のまま相手の拳を身をよじってかわし、そのまま姿勢を低め、相手の襟を掴み、一気に肩から相手の胴へと飛び込んだ。
「ぬぅ!?」
背中の上で、ヴァンが驚いているのが分かる――いや、以前にもこんなことがあったような――ともかくチャンスだ、青年はヴァンの襟を引き、そのまま足と腰を使って相手を体を浮かせ、そのまま勢いよく相手を石の壁めがけて放り投げた。
『馬鹿者! 投げ技の途中で手を離しては危険だと、何度も言っているだろう!?』
どこか、懐かしい声が聞こえてくる。しかし、勢いよく投げ飛ばしたほうが、なんだか強そうじゃないか――。
「……そう言えば、昔もこんな風に組み手をしたな」
あの時は、相手を怪我させてしまったのだが――いや、今だって怪我をさせるつもりで投げたのだが、相手も昔ほど軟ではない、崩れた石壁から、ヴァンが立ち上がった。
「前は、俺がちょっと技をかけると、すぐに泣いてたよなぁ?」
「……七年は前に話だ!!」
そう、弱虫の癖にすぐに頭に血を上らせて、泣きながら反撃に来たものだ。もちろん、今は涙の変わりに、顔一杯の怒りでこちらへ突貫してきているのだが――。
(えぇっと、こういうときのいなし方は……)
こんな感じで、昔はよく喧嘩まがいの組み手をしていた。だいたい、自分のほうが上手で、逆上してきたヴァンをいなしていた――などと青年が昔を懐かしんでいたら、空気を読まぬ旧友が、脚と地面との斥力で一気に加速し、そのまま宙を飛んで青年の体に蹴りを入れてきた。予想外に早く、避けることも出来ず、今度は青年のほうが吹き飛ばされて、別の壁に穴を開けてしまった。
「……出会って一年もすれば、私のほうが勝つようになっていた」
そう言えば、そうだったかも――コイツは真面目で、師匠の言うことを自分より良く聞いていたからな――。
「い、いいや! 俺のほうが通算では勝ってたね!!」
反論するために、青年は背中の痛みを忘れて、勢いよく上半身を起こした。通算では勝ってた、なんだか怪しい響きなのだが、体感では間違いなく自分のほうが勝っていたはずだ。確かに一時期はよく負けていたのだが、悔しくなって自分も真面目に打ち込んで、それで巻き返したはずである。
「いや、私とお前の戦績は、百二十対百十だ」
「う、嘘だろ!?」
しっかり数えてんじゃねぇ、そう思う青年をよそに、ヴァンはあくまでも生真面目な顔で、何か思い込んでいた。
「……グラスランズでの一戦を入れれば、百二十一対百十だな」
「嫌なやつだな、お前!?」
この天然の、本人には一切嫌味のないところが、また嫌味なヤツなのだ。あの嫌味な真面目面、殴らないと気がすまない。
「そんなら今日だけで十一回分ぶっ飛ばすだけだ!!」
多分、アイツは自分が勝ち始めてから勝敗を数えだしたんだろうから、実際は自分の方が勝っているはずのなのだが、逆を言えば言質を取ったわけで、きちんと十一回分勝てば、向こうも負けを認めざるをえないことになったわけである。術式とかいう小ざかしい能力を使うのなら、こっちもだ――青年は相手の手前で翻り、コートの裾の繊維を延ばして一閃した。
「それならこっちは、十二回分負かせてやるッ!!」
コートの裾は相手の盾でガードされた。だが、こちらも段々と体が馴染んできた――相手も予想外の威力だったのだろう、バリアで護られているはずの盾が僅かにへこんだ。しかし、ヴァンも修羅場をくぐってきただけはある、すぐに口元を引き締めて体を捻り、コートの内側へと入り込んでくる。
だが、そこまで青年は予想していた。
「「おぉおおおおッ!!」」
互いの拳と拳がぶつかり合う。以前は、相手の斥力に勝てなかった。だが、以前は他人の魂を燃やしていたのだ。今回は、自分の魂を燃やしているのだから、負けない、負けるわけにはいかない。こちらを弾き飛ばす力も、所詮は力。その力より、こちらの押し出す力のほうが強ければ――。
しかし、最後まで押し込むことは出来なかった。ヴァンのほうが、力の向きを逆転させ、自分の体を弾き、青年から一旦距離を置いた。
僅かにひびの入った手甲を押さえ、額に血と汗を滲ませながら、ヴァンの方が肩で息をしていた。
「……これが、アンフォーギブンの力……」
実際、こちらはまだまだこれから、やっと調子が出てきたところだ。一通り暴れたおかげが、青年も頭がスッキリしてきていた。
「……どうする? お前が負けを認めるなら、俺も……」
これ以上やったら、どちらが勝つかは、恐らく向こうも分かっているはずだった。むしろ、許されざる者などという胡散臭い者の相手をして、よくここまでやったと言ってもよい――だが、ヴァンは額の汗を拭うこともせず、青年のほうを射抜いてきた。
「……黙れ!!」
盾をこちらへ投げてくるが、青年はそれを見てから手のひらで打ち払った。勢いの増した盾が、一つの建物の壁を勢いよく崩壊させる音が聞こえた。
「ネッド……なぜ、いつもお前は来てしまうんだ?」
「……俺の行く先に、たまたまお前が居るだけだ。自意識過剰なんじゃねぇか?」
「……五月蝿い!」
手甲から蒸気を噴出させ、ヴァンが拳を突き出してくる。だが、単調な攻撃になってしまっており――しかし、青年はそれを、ただ避け続けた。
「私だって、好きでこんなことをしているわけじゃない!」
今まで、コイツも色々と溜め込んできたのだろう、それを、吐き出させてやらないとならない。
「小さいころから、人々のために戦うことを教えられてきた! それが、正しいことだと信じてここまできた!」
今のコイツは、泣き虫だったあのころのヴァンだ――だけど、敢えて思い出させてやらなければ。こいつ自身の、本来の姿を――泣き虫で弱かった以上に、熱い何かを持っていた、幼き日々のことを。
「それに、誓ったんだ、あの日……ネッドと師匠が死んだと思ったあの日! 絶対、仇をとってやるって!」
(……あぁ、そうかよ)
コイツを追い詰めていたのは、結局自分だったのだ。本来は優しいコイツが、自分を押し殺して、戦う道を選んで――。
「……私に撃ち抜かれたあの時! お前はもう、立ち上がるべきじゃなかったんだ! だって……」
「……ゴチャゴチャうるせぇ!!」
別に、怒ったわけではない。だが、その先を言わせるわけにはいかなかった。言わせないついでに青年は反撃に出て、自らの肩で相手を押し出した。
「全部自分で選んだ結果だ。俺の生き方を、お前にどうこう言われる筋合いはねぇよ」
「ネッド……」
今の一撃で間合いを離され、ヴァンはどことなく虚ろな目でこちらを眺めている。そう、コイツは自分を見失ってしまっているのだから――。
「……今ので分かったぞ。今のままじゃ、お前はぜってー俺には勝てないね」
「……なんだと?」
「お前の戦う理由には、自分がねぇんだ……誰かのために、俺やダンバーの仇のために……やりたくも無い殺しに手を染めようとしている。そんな生半可なヤツに、やられてたまるかってんだよ」
青年はヴァンに背中を向け、自分が弾き返した盾のほうへと歩き出した。ヴァンのシンボル、何かを護るための力。これが無くては始まらないだろう、青年はラウンドシールドを、友のほうへと投げ出した。まだ、何か掴もうという意思はあるのだろう、ヴァンはしっかりとそれを受け取った。
「本当のお前は、そんなんじゃないはずだ……何より、そんな迷ってるだけのお前をぶっ飛ばしたところで、俺の勝ちにならねーだろうが」
キマった、ここ最近で一番格好良かったに違いない――青年はそう思ったのだが、残念なことに当のヴァンの方は、何かまだ要領を得ない感じの表情をしていた。
「……っかー! 鈍いなこの馬鹿! お前のそれは、何のためにあるかって聞いてんだよ!?」
青年がヴァンの持っている盾を指差すと、ヴァンは本来の自分をじっくりと見つめなおし始めた。
「……私の盾は、何かを護るために……」
「あぁ、そうだよ……それが本来のお前だよ」
しばらくの間、ヴァンはそのまま静止していた。しかし段々と、眼に力が宿っていく――。
「成る程……いや、忘れていたわけではない。だが、順番を見失っていた」
そう言いながら、マクシミリアン・ヴァン・グラントは立ち上がった。そして、こちらへ駆けてくる――青年も同様、ヴァンのほうへと駆け寄った。
右腕から繊維の刃を生成し、ヴァンの後方から来ていた黒服を一体切り刻み、塵に返した。自分の後方でも、ヴァンが後ろから来ていたアンチェインドを一体葬った音が聞こえた。
互いに、そのまま勢いを付けて振り返る。青年の刃を、友の盾が跳ね返した。
「マクシミリアン・ヴァン・グラント!! お前は何のために戦う!?」
「私は、この国が間違えた方へ往かない為に! 人民の平和と安寧を護るために戦う!!」
そういうヴァンの顔は、先ほどと打って変わって決意に満ち溢れていた。
互いにもう一度、間合いを離す。そして、ヴァンが青年のほうを指差してきた。
「リサ・K・ヘブンズステア、並びに黙示録の祈士たちを全員拘束し、正しき法の下で裁かせよう――そのために、私に協力しろ、ネッド・アークライト」
「はっ、なってねぇな。人にモノを頼む態度ってもんがよ」
こう返すのは、想定のうちなのだろう、美形の口元が楽しげにつり上がった。こちらも、なんだか楽しくなってきた――そう、今のコイツは、越える甲斐が出てきた。
「しかし、まだまだだぜ、ヴァン……それくらいじゃ、まだ俺を倒せないぜ」
「……何?」
先ほどの仕返しだ、改めて思い知らさせてやる――そういう思いを込めて、青年は人差し指で相手を招いた。
「かかってきな、証明してやるぜ」
「ふっ……相変わらず安い挑発だ」
ヴァンは左手で手甲のシリンダーを外し、輝石を詰めなおしている。もちろん、今殴れば隙だらけなのだが、それを待たないのは男ではない、青年はそう思った。
「……だが、それなら見せてみろ!!」
雄雄しい表情で、ヴァンが踏み込んできた。相手のシールドバッシュは敢えて受けた。なかなか効く――やはり、迷いが無くなった男の方が強い。
「ちぃ……! 挑発されて腰が引けるほど、甘ちゃんじゃなかったらしいな!?」
「舐めるなよネッド!!」
間髪いれずに、相手の追撃が始まる。そう、こうこなくっちゃ――青年は相手の拳をかわし、両手の突き合わせた掌底で、相手を吹き飛ばした。しかし、浅い――殴った瞬間、強い反動を感じた。バリアで軽減されたので、相手にはまったくダメージが入っていないようだった。
「……おぉ!!」
ヴァンは土煙をあげながら後ずさりし、止まるとすぐに転がっている石ころを蹴り飛ばしてきた。コイツが放つ物はなんでも、斥力によって加速するため、それなりの威力にはなる。無論、わざわざ当たってやることもない、青年が腹部を繊維状に分解すると、弾丸の如き石ころは青年の横をすり抜けていった。
そして、すぐに走り出す。それは、相手のほうでなく――力に振り回されてはいけない、あくまでも、自分は自分らしく――。
「ネッド、どうした!? お前のほうこそ、かかってこないのか!?」
瓦礫のほうへ駆け出した青年の背後から、ヴァンが詰めてくる気配を感じる。仕掛けはばれないように、こっそりとやる必要がある、青年は向き直って、相手の肘をかわした。男の肘によって石の壁が崩れ――新たに引っ掛ける場所ができた。相手は土煙と夜の闇のせいで、青年の仕掛けには気づいていない。そのまま、青年はヴァンの横をすり抜け、反対方向の建物に向かった。
「くっ……待て!!」
「ばーか! 待てって言われて待つやつがいるか!」
コイツを倒すには、生半可じゃ駄目だ。自分で煽っておいてなんだが、先ほどまでのヴァンなら、今のままでも倒せただろう。しかし、今のやる気に満ち溢れたこの男の本質を持ってすれば、かなりの一撃を叩き込まないと倒すことはできないはずだ。
「……認めるよヴァン、お前の強さ! 一人で戦ってきたこの五年間を!!」
叫びながら、更なる仕掛けをしていく――これは、いつぞや少女と一緒に戦ったときと同じもの。しかし今の自分の力を持ってすれば、一人でも必殺の業となり得るはず。
「では、ネッド・アークライト!! お前は何のために戦う!?」
「……いいぜ、教えてやる!!」
仕上げには少し足らないが、後は気合で補えばいい――青年は右腕を空へと掲げた。その瞬間、辺りに仕掛けていた細い糸が一気に太くなり、マクシミリアン・ヴァン・グラントを捕らえた。
◆
「くっ……これは!?」
どうやら、ネッドは走り回りながら繊維の結界を敷いていたらしい。半ば興奮していて、しかも直前まで黒の迷彩色をしていたらしく、仕掛けにはマクシミリアン・ヴァン・グラント気づけなかった。
(……こいつの性格を考えれば、何か仕掛けていることくらい、読めたはずだ!)
しかし、後の祭りだ。ともかく、今自分はフィフサイド砦の中空に、四肢を取られて拘束されている――急いで斥力で戒めを解かなければ――。
「……全力で防御しろよ? さもないと……」
声のしたほうを見上げると、雲が切れ、月を背景に、ダスターコートがたなびいているのが見える。成る程、グラスランズでの意趣返しか――息を吸い、気を練っているのだろう、そして顔こそ見えないが――黒い繊維の下で、ヤツは凄くいい笑顔をしているに違いない。そして自分も――息を吸い、全力で相手の攻撃に備えた。
「死ぬぜぇ!? ヴァァァアアアアアアアンッ!!」
「ネッドォォオオオオオオオッ!!」
叫んで、衝撃に備える――ネッドの脚が、自らの腹部にぶち当たるのと同時に、ヴァンは能力を全力で展開した。衝突した瞬間、斥力と相手の力とがせめぎ合い――それでも相手の押し込む力力の方が上回った。鈍い痛みが腹部に走るが、それでも強固な戒めのせいで、威力は逃げることなく自分を撃ち落そうとしてくる――だが、こちらも意地だ、誰かを護るための力を、今は自分のために――。
その瞬間、こちらの思考を見透かしたかのように、ネッド・アークライトが語りかけてきた。
「お前と俺の決定的な違い!! それは、お前はゴチャゴチャ複雑で!! 俺はメッチャ単純だってことだ!!」
シンプルなほうが強いと言うことか。確かに、確実に押されている、もはや長くはもちそうにない――しかし、そう言われても、すぐにこの男に抗えるほどの何かが見つかるわけでもなかった。
「……私は、貴様ほど単細胞になれるわけではない!!」
「ならばお前はここで落ちろ!!」
押し込む力が強くなる、このままでは負ける――単純に、それはイヤだった。なぜか、あぁ、成る程、自分も意外に単細胞なのかもしれない――ただ、この男に負けるのが悔しいから、負けたくない――何か、何か無いか、ネッドに対抗できるだけの、自分にとって芯になるようなもの――。
「……俺が何のために戦うか!!」
ネッドが、息を大きく吸い込むのが聞こえた――あぁ、なんだか懐かしい、そう、昔からそうだった、自分は、ネッドに負けたくなくて、ずっと背中を追いかけて、それで――。
「それは!! 愛ッ!!」
たったの一言で表せる、ネッドの強さ――つまり、愛は強いと言うことか――瞬間、手足の戒めが解かれ、ネッドが自分を蹴りぬけていき、次いでネッドの魂か爆発を起こし、マクシミリアン・ヴァン・グラントの体を焼いた。
そしてなぜだろうか、愛と聴いた瞬間、金髪の乙女の寂しげな背中が脳裏に浮かんだ。
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