11月16日の日記
吉村と映画を見に行った。
陽子が熱を出したんだって。
ドタバタなラブコメ。
いかにも陽子が見たがりそうなやつ。
吉村はたぶん、自分では見なさそうなやつ。
陽子は気づいてないかも知れないけど、あたしにはそれがわかる。
でも、これ見ようって言い出したの、きっと吉村だ。
それもあたしにはわかる。
わからいでか。
らいでかってなんなのか、よう知らんけど。
興味ないタイプの映画だったから、ストーリー追うの、めんどくて、小物とかセットとか端役の衣装とか、そんなんばっかり見てた。
エキストラに毛が生えた感じの人がやってた、コンビニのレジのオバさん、2回出てきたけど、あの人が帰る家の間取りとか、わけわかんないこと想像して間をもたしてた。
三十代後半、バツイチ。
ワンルームで一人暮らし。
売れ残りで廃棄処分のコンビニ弁当くすねて、
あ、あれ持って帰ったらいけないんだってね、初めて聞いた時、驚いた。
もったいないよね、いいじゃん、別に、どうせ捨てんなら。
で、くすねたのチンして、ラップ剥がしてたら、端っこにはみ出てたソースが熱くなってて、「チっ」なんて耳たぶ触ってる。
耳たぶなんかじゃ冷えないよね。
あれやる人わりといるけどいまだによくわかんない。
幸か不幸か、子供は出来なくて、ある意味気楽な天涯孤独ってやつ。
コンビニのパートだけでも、倹約したら、そこそこ暮らせるレベル。
あ、あの部屋干しの下着、この前の休みからもう3日も干しっぱなしじゃん。
こうして女やめていくわけね、ハハハ、とか思ってる。
やめていくも何もちゃんと女してたことあんの、あんた、とか思ってると、古風にセピア色な回想シーン演出はいって、安手の特殊効果で制服のJKに変身。
あの頃から世界の端役だったよね〜、あたし、とか思う。
てか、端役に悪いよね。
いいとこ、エキストラに毛が生えたの。
ほら、あのしょうもないラブコメの日、覚えてる?。
熱出した彼女の代役に誘っても、絶対、彼女に怒らんないと思われてる安全パイってどうよ?(笑)。
でも端役には端役の、エキストラにはエキストラの役割があるから、泣くのは泣ける場面になるまで我慢した。
ちょっと泣きすぎたけどね。
吉村、少し驚いてた。
「意外。こーゆーので泣くとか思わんかった」だってさ。
吉村君、正解です。
映画で泣いたんじゃござんせん。
でも、そこわかってんなら誘うなよ、あの映画に(笑)
二時間座ってたら誰でもいいんか(笑)
あ、誰でもいいからエキストラか(笑)
でも変なとこだけでもわかっててくれてた感じが、なんか嬉しかったので、珍しく長々と日記に書いてみましたとさ。
めでたしめでたし。
めでたくねーし(笑)
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