USO吐きキャッチャー

 もう一軒と言い張る千鳥足を、さすがに今夜は止められなかった。グラグラ揺れるハイヒールは、やがてクルリとわきにそれ、ゲーセンの両替機へ向かった。

「久しぶりだな、こういうところ」

 俺の呼び掛けには応えずに、彼女はUFOキャッチャーに取りついた。

 しこたま呷った酒の加減か、惜しいと囃せる遥か手前でアームは幾度と無く獲物を取りこぼす。頃合いを見て

「次、行くんだろ」

 と促すと、よれたスーツの背中がこう言った。

「あたしは必ず手に入れんの。欲しくなったら必ずね」

 一瞬、返しに詰まったが、かろうじていつもの口調で応じた。

「どの口が言う!。今日、何の会?」

「山口春香、略奪愛失敗記念、大残念会であります!」

 彼女はおどけて敬礼すると、ゲーム機を離れて歩き出した。数歩後から付いてく俺には、欲しくないので我慢してみるか?、とは、冗談紛れにも言えなかった。氷河期入社の戦友だしな。

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