幕間 ―騒動のその後で―

 ミシェルは魔王が出掛けた後でサラを自宅に招いた。お願いされていたこととは別に、賑やかだった昨日の話が聞きたかったからだ。

 でも「呪術で耳と尻尾が生えました」と聞いたときはさすがに驚いた。


「私も見たかったなぁ。サラちゃんのキメラ姿」

「人様にお見せできるものではないです」

 昨日の出来事を思いだしたのか、サラは項垂れる。

 

 本人は謙遜ではなく本心から似合わないと思っているのだろうが、可愛らしいサラの容姿に狼の尻尾と耳が生えれば、似合わないはずがない。

 

「それで昨日の夜はどうなったの? 魔王さんは?」

「それは――」

 ミシェルは、サラがてっきり真っ赤になって慌てると思っていたが、意外にも冷静だった。



 本当のサラの姿が見たいから。


 そう言うと、セイアッドは名残惜しそうな顔で寝室に戻ったらしい。


「相当我慢したのねぇ」

 セイアッドの葛藤が手に取るようにわかり、つい苦笑いを浮かべた。

 

 そろそろ限界だろうなぁ。

 ミシェルはセイアッドに同情し、本題に入った。

「じゃあこの前のお礼の件だけど、これでいい?」

 用意していた本を卓の上に乗せる。

 サラは嬉しそうに表情を明るくした。

「ありがとうございます」

「今日の夜に言っちゃうの?」

 今度は顔を真っ赤にしてサラは首を横に振った。

「明日仕事が入ったので」

「休みの前の日が良いわよ。翌朝はゆっくり休めた方がいいしね」

「わかりました」

 ミシェルの言葉の真意がわかっていないサラは素直に頷いていた。


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