第276話 なんだってー

 二、三歳くらいしか離れていないと思っていた相手が、実は七歳も年下だったと知らされるショック、おわかりいただけるだろうか?


「サーリ、今日はどうしたのです? 先程からぼんやりと」

「は! い、いえ、少し、疲れがたまっているのかもしれません」


 嘘でーす。ミシアが凄く年下だったっていうのがショックなだけでーす。いや本当、こっちの世界の子供って、どうなってるのよ……


 ジジ様は、私の嘘にしっかり欺されてくれた。


「そう……息子が迷惑をかけて、悪かったわ」

「いえいえ! ちゃんと依頼を受けて、報酬をもらってますから!」


 ええ、ただのビジネスですとも。……実際、叔父さん大公の依頼は簡単に終えられたしねー。これも神罰のおかげかな?


『神に感謝の祈りを捧げましょう。祈りは神に届きます』


 あー、そういえば前にそれ、聞いた事がある。言ってきたのが胡散臭いおっちゃん聖職者だったから、嘘だと思ってたわ。


 でも、検索先生の言葉なら、信用出来るから今度祈ろうっと。デンセットの教会でいいのかなー。


『砦の自室でも問題ありません。祈りに場所は問いません』


 神様って、意外と懐広いのかな。


 うだうだ考えている間にも、目の前では祖母と孫娘の心温まる交流が……


「それでね、その時来たワノガバ侯爵が、いつか王位を我が物にって、お父様とお話ししている最中、ずっと考えていたのよ」

「あらまあ。あの家には、王家の血は少しも入っていないのだけれど」

「あと、レグキア伯爵は、カイドお兄様の元へ自分の娘をお嫁に出したいんですって」

「ほほほ、それはまた」

「ネフォウス伯爵は、奥様がナシアンと関係が深い国からお嫁に来たから、あの家はナシアンと仲がいいそうよ」

「ミシアは優秀ねえ」


 心温まる交流……のはずだよね? 気のせいか、政治の裏話に聞こえるんだけど。


「それにしても」


 ジジ様はカップをソーサーに戻しながら、呟いた。


「どこかで聞いた事のある名前ばかり、出てくる事」


 ほほほと笑うジジ様に、侍女のヤーニ様達も「まったくです」と言って笑う。貴族の名前だからねえ。王族のジジ様が知っていても、不思議はない。


 あ、ちなみに本日の茶器は、私が売った磁器です。野いちご柄のパク……もとい、インスパイア作品。


『ものは言い様ですね!』


 いいんですよ! 放っておいてください! あー、お茶がおいしい。茶菓子も美味しいよ。


 今日の茶菓子はダガード伝統のお菓子という、蜂蜜をたっぷり使った焼き菓子。ナッツぎっしりで、結構食べ応えがある。


 ナッツ類は細かく刻んであるし、お菓子自体が一口大だから食べるのに苦労はしないなあー。そうか、こういう工夫の仕方もあるんだ。


 そのうち、一口大のケーキ、いわゆるプチフールでも作ろうかな。


 あれ? 気づいたら、ジジ様達の視線が私に集まっている。何で?


「サーリ、あなた、気づいていないでしょう?」

「へ? 何をですか?」

「先程までミシアが挙げていた名前、あなたに嫌がらせをした群れの娘達の家ですよ」


 あー!! あれかー! でも、あの時それぞれの家の名前まで、聞いたっけ? 憶えていないなあ。


「それに、今回ナバルを襲撃しようとしていた者達の名前でもあるんですよ」


 何だってええええええ!?



****************



 体調不良につき、本日は短めです。

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