第88話 足りなかった……

 砦に帰ってきたら、それぞれ作業開始です。


「さー、今日は壁をやるぞー!」

「ピイー!」

「ヤルゾー」


 ブランシュもノワールもやる気満々なり。可愛いのう。


 今日は壁。この砦は三重構造になっていて、一番外側の壁を越えると、今じいちゃんが飛行船を作っている区域がある。そこから階段を上って次の壁を越えると、前は厩舎とか倉庫とかがあった区域。


 ちなみに、ここには今は何もない。一応、ここにじいちゃんの研究室を作る予定。


 で、三つ目の壁を越えると、塔がある。テントを出して生活しているのはここ。神馬を呼ぶのに果実を広げているのも、ここ。


 そして本日手を入れるのは、この一番内側の壁だー。


 内側ではあるけれど、ここが最終防衛ラインになるので、手は抜かない。砦だもん、最強防備で固めましょ。


 ここもドラゴンコンクリートを使う予定なんだけど、枠代わりに石材を積んでいく。


 壁は二重で中を通れるように。幅は……通路で三メートルくらいかな? それにコンクリの厚みと枠の厚みとで……このくらい。


 壁の中には地下は作らないので、基礎を作ったらその上にどんどん石を積んでいこう。魔法って便利。


 積み上がっていく石にじゃれるように、ブランシュとノワールがひょいひょい飛び回ってる。遊んでるんだね。ぶつからないよう、気をつけなよー。


 壁は上から見ると変形してる五角形。角二つには塔が接してる状態。というか、塔の一部が壁になってる感じ?


 コンクリートは午後には骨の焼成が終わるかな。一応、使うのは明日からにしようっと。


 明日の朝は、散歩の帰りに海まで出て海水を汲んでこなきゃ。


「ピイピイ」

「モウナイヨー」


 ん? 二匹が何か言ってる。もうないよー? 何が……って、ああ!


「石材が足りない!」


 しまった。また石切場まで行って買ってこなきゃ。その前に、検索先生に必要な量を再計算してもらおう。


 ……うん、かなりの量だって事だけはわかった。んじゃ、早速行ってこようか。


「じいちゃーん、ちょっと買い物行ってくるー」

「おーう、気をつけてなー」


 ちらっと見えたじいちゃんの作業区域、何か随分と広く取ってなかった? 気のせい?


 ……ま、いっか。あの区域全部使うと決まった訳じゃないし、コビト出す都合で土はたくさん必要だもんね。


 あ、地下掘った時に出た土、じいちゃんに渡してくればよかった。




 ほうきでひとっ飛び、石切場で石材を購入してきました。必要量を全部は買えなかったから、また行く事になるけど。


 多すぎて、在庫が間に合わないんだってー。現場の責任者っていうおっちゃんに、渋い顔されちゃったよ。


 それらを全部亜空間収納に入れて、砦に帰る。そういえば、大量の石材を一挙に消したら、おっちゃんがびっくりしてたっけ。


 亜空間収納を持ってる人はどうか知らないけど、見た目以上の容量を持ってる、いわゆるマジックバッグは持ってる人はそこそこいるのにな。


 砦に帰ると、何かある。いや、石切場に行って帰ってで、多分三時間も留守にしていないはずなんだけど。


 いきなり、大きな船みたいなものが出現してる。あれだ、テレビで見たノアの箱舟みたいな感じ。


 ……どう考えても、じいちゃんだな。

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