　わたしがお風呂に入っている時だった。

　カタン

　洗面室で音がした。

　わたしは髪を洗っている最中だったが、音が気になりお風呂の扉を開けた。すると洗面台の上にいる猫と目が合った。猫はイタズラを見られたような、ばつの悪そうな顔をして微動だにしない。よく見ると洗面台の横の台に置いてあったティッシュペーパーの箱が落ちている。音がしたのはこれのせいらしい。そして犯人は猫だろう。ティッシュペーパーが置いてあった場所に立っているのだから。しかしたいしたイタズラではない。ティッシュペーパーの箱が落ちるくらいどうと言うこともない。これくらいで怒るほどわたしの心は狭くない。わたしは引き続き髪を洗うためお風呂の扉を閉めた。

　わたしが扉を閉めるまで猫はわたしを凝視していた。怒られると思ったのだろうか。

　そしてわたしがお風呂から出ようと扉を開けると、バスマットの上で猫が待っていた。もう自分のしたイタズラは忘れたようだ。