夏
第50話 健康診断(前編)
猫の健康診断として、年に一度病院で血液検査をしてもらっている。また今年もそのために病院へ行かなくては。
以前猫をキャリーバッグに入れる時は大変だった。猫を捕まえてキャリーバッグに入れるのだが、抵抗が激しくわたしの背中まで爪を立てて登ろうとする。あまりにも大変なので、キャリーバッグを変えた。前のキャリーバッグはふにゃりと倒れてしまうのだが、新しいものはしっかりとしている。そこで新しいキャリーバッグの中でごはんをあげ、慣らすようにした。すると猫はキャリーバッグの中で、ごはんを食べるようになった。そして今回もごはんをキャリーバッグの中に入れて猫を誘う。猫はキャリーバッグの中でごはんを食べ始めた。
今だ!
わたしは、キャリーバッグのファスナーを上げて猫を捕獲する。成功した。猫は何が起こったかわからないようで、キャリーバッグの中をぐるぐる回っている。
わたしは猫を連れて病院へ行った。
「おはようございます。血液検査をしてもらいたいのですが」
「はい、お待ちください」
診察室のドアが開く。
「朝、ごはんは抜いてますよね?」
「えっ、ごはん抜くんでしたっけ?」
「そうですよ。食べてきちゃいました?」
「はい、すみません。また出直します。あっ、う○ちの検査だけでもお願いします」
あぁ、猫に可哀想なことをしてしまった。う○ちだけでも持ってきて良かった。
その時先生が「体重だけでも測りましょうか」と言ってくれた。良い先生だ。わたしは、「太っちゃったんです」と言う。
猫を診察台に乗せようとキャリーバッグの上のファスナーを開く。猫はキャリーバッグに入れてあるバスタオルの下へ隠れようとしている。はっきり言って丸見えだが。猫を無理矢理バスタオルから引き剥がして診察台に乗せる。猫は腰が抜けたように這って逃げようとする。わたしはガシッと猫を捕まえる。
そして、体重計を見て驚く。
「えっ、2.85kg?」
「この子、太ってないですよ」
「でも、お腹に肉が、皮が」
わたしは訳のわからないことを言ってしまった。先生は猫を横にしてお腹を診てくれた。
「ここに肉がつくんですが、ついてないですよ」
「そうなんですか」
太っていると思っていたが毛だったのだろうか。とにかく安心した。
先生にお礼を言って帰宅する。家に着いて猫はほっとしたようだ。猫を家の中でキャリーバッグから出す。猫は家の中を歩き回り、わたしにすり寄った。その後わたしをベッドへと誘う。そう、いつもわたしが外出して帰った時にすることだ。わたしがベッドに座り手を出すと、猫は自分の頬を押しつけてくる。そして頬を掻いてあげるのだ。今日は病院へ行ったからかいつもより激しい。右に左にと顔を押しつけてくる。そして頬から首、背中まで掻いてでんぐり返しだ。わたしはだんだん疲れてきた。五分位そうしていただろうか。ようやく猫も満足して去っていく。
しかし今回血液検査が出来なかったので、ごはん抜きでまた病院へ行かなければならない。それに来月はワクチン接種のため、病院へ行くことを猫は知らない。
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