463豚 都合よくはいかないもんだ
俺が知っている
アニメの中では
「スロウ・デニング! お前が再びサーキスタの地を踏むと聞いて、俺達がどう考えたか分かるか――!」
激昂している
「――お前の存在が、アリシア様をッ! 蝕んだ! 俺はあの頃のアリシア様をよく知っている!」
水流の先が向かうは俺って考えると、軌道の動きは想定出来る。
まるで、しなる鞭のようだった。うん、それが一番しっくりくる。うねる水の束は、人間の手首ぐらいならすとんと両断出来る威力を持っているだろう。
しかしだ。魔法使いとして、綺麗すぎる。
「そんなお前が……再び表舞台に出てくると聞いた時は、ダリスの人選に呆れ果てたものだ! あのスロウ・デニングに、何が出来る! お前はただ、魔法の才能だけ与えられた幼稚な――!」
威力を高めることのみを追求した水の魔法。その切っ先は俺が掴めるだけの細さにまで調整され――つまり、具合がいいってことだった。勿論、素手で掴んだわけじゃない。魔法には、魔法。水の魔法には、水の魔法ってことで。奴の魔法を掴んだ俺の両手は、魔法によって強度が高められている。
生み出された水流は、逆方向の力を加えられたことで呆気なく霧散した。
「生意気なガキが! だが、次はそう上手く行くかな、デニングのクソ野郎!」
俺が相手にしている一番手の騎士は経験がそれほど豊富じゃない。今の魔法にしたってそうだ。工夫すべき点は幾つもあった。
だけど、まだ小手調べだろう。
見た感じ、まだ俺とそう年齢が変わらない。
サーキスタにも、クルッシュ魔法学園と同様な魔法学園が幾つもあると聞いているから、そこを卒業していく年も経っていないだろう。
しかし、怒ってるなあ。俺の存在自体が気に食わないようだ。まあ、
俺が加害者で、アリシアが被害者。この立ち位置は、未来永劫変わらない。
名前も知らないあの騎士は再び水の鞭を再構成。さっきと違う点は、水に淀みがある点か。
水と闇の
奴らは若手騎士を動かせて、俺の隙を待っている。
現実は上手くいかないもんだ。もっと恰好よく、ファナ殿下をこの場から連れ出せれば良かった。だけど、犠牲者を出さない戦い方は難易度が高すぎる。犠牲者を出せば、ファナ殿下を連れて逃げ出した所で結果は大きく変わらないからな。
……さて、
今俺達がいる場所は、巨大な湖の上に存在する陸の孤島だ。湖を囲むように大国サーキスタの領土が存在し、孤島とサーキスタを繋ぐ橋が唯一の逃げ場と言っていい。
……だけど、さっきから嫌な気配を感じるんだ。
奴らの背後、橋がある方角で強い自己主張を行う魔力のうねり。
間違いなく、
余裕を気取っているのか、俺が弱まる先を待っているのか。
……奴と鉢合わせすることだけは避けたかった。
理由は単純な話。
自分の実力は、よく分かっているつもりだ。
この世界には、俺よりも余程強い奴らが何人もいて、
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