【??視点】386豚 ヨーレムの街にて
「丁重に扱えよ、イチバン! 見かけはしょぼいけどなあ、これ一つで王都一等地で土地付きの家が買える一級品なんだぞ!」
「ひひっ、お前。誰に向かって物を言っているんだ……」
ヨーレムの街に建造中である何の変哲もない一軒家に彼らはいた。
窓の無い家だ、外からは中の様子が分からない。彼らは作業員の恰好をし、肩に重たい材木を担ぎながら、家に出入りを繰り返す。
それは彼らが騎士国家の主要拠点に持つ隠れ家だった。
「死にたくない奴らは、逃げてもいいって爺さんが言ってたぞ!」
「そんな奴、いねえよ! 皆、爺さんに拾われた命だ。俺はどこまでもついていくぜ!」
「楽しみだなあ! クルッシュ魔法学園! 随分と変わってるって噂だぜ!」
「しかし、ほんとに公爵をやっちまうのか? あれ以上に割のいい雇用主はいないんじゃないのか、なあ爺さん!」
出入りを続ける男たちの中で、唯一部屋の奥でじっと椅子に腰かける者がいた。
爺さんと呼ばれる男は、男たちの中でも特別、年齢を重ねた老紳士。
けれど皆は知っているのだ。この男が、見かけ通りの年齢でないことを。爺さんと呼ばれた男は、渡された水晶を磨きながら何かを考えている。
ふと、彼らを束ねる老紳士は頭を上げて、呟いた。
「皆に伝えておくが、クルッシュ魔法学園では一纏まりに固まらないように。相手はあの
「高鳴るなあ、あの公爵家とやりあうんだ! だけど、一番やべえのがあのエレノア・ダリスやデニング公爵が俺達の要望を飲んだってことだな!」
彼らのことを知る者は、騎士国家でも限りなく少ない。
歴代公爵の直下に置かれ、悪事を成す。彼らのような存在を公爵家が飼っているからこそ、公爵家が恐れられ、未だ騎士国家において強大な権力を保持し続けている。
そして、今。
公爵家と、彼らの間で一つの軋轢が生まれていた。
それは公爵家の歴史を揺るがす大問題。
――騎士国家の女王エレノア・ダリスや枢機卿マルディーニの頭を悩ます程に。しかし、エレノア・ダリスは決断。
即ち、彼らの殲滅を雇用主であるバルデロイ・デニングに厳命したのだ。
「バルデロイ・デニングの相手は私に任せればいい。それより血の回収を怠らないように。特にイチバン君、君の仕事は分かっているかな?」
「ひひ……ㇲロウ・デニングの相手だろ……」
「頼りにしている。君にしかできない仕事だ」
彼らは、一様に愛国者だ。
自分たちのような汚れ役を引き受ける人材が騎士国家に必要だと理解している。一人一人がクルッシュ魔法学園の卒業生であり、国の未来を憂う集団だ。
歴代のデニング公爵に使われ、共に騎士国家を在るべき姿へ導いてきた。
「ひひっ。それよりデニング公爵だ。今度は
「恐らく」
「ひひひ……楽しみだ……爺さん、俺がスロウ・デニングを取ったら、デニング公爵の相手、任せてくれないか……ひひ」
「イチバン君、本気で言ってるのか。君にスロウ・デニングが取れると?」
しかし、スロウ・デニングの暗躍。
ドストル帝国の南下政策が急転換を迎えたため、騎士国家の中でもこれからの対ドストル帝国戦略に大きな歪が生まれていた。
騎士国家という南方の大国はドストル帝国に対して、どのような対応を取るか。
「――ひひっ、ㇲロウ・デニングが次期デニング公爵候補の一人なら、俺達の活躍を見せつけなきゃいけねえからな」
未だ眠り続ける北方の超大国に対して。
仕掛けていくのか、これまで通り何もしないのか。
今回、ドストル帝国の南下政策に関して、最も危機感を覚えたのが彼らである。
――アニメの中で、シューヤ・ニュケルンをサポートし続けた
―――――――――――――――――――
お待たせして、大変申し訳ありません。
連載を再開します。
大戦闘編です。スロウの両翼騎士や公爵も戦います。
本章が終わったら、ドストル帝国編に突入。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます