250豚 英雄の帰還 後編Last
「その気味悪い杖がアンタの祖国、
「ほう……ならば、貴様が
この爺さん、雷魔法の名はエレクトリック・ペトワークス。
あの
そして、そんな雷魔法が持つあの杖は命を持つ
あのダンジョン都市で、俺の結界を容易く切り裂いた
だけど――それがどうした。
この国を出る前の俺なら多少はビビったかもしれないが、今の俺はあの頃のとは違うんでね。
「いーや。きちんと分かってるぜ。どれ程アンタが才気溢れる魔法使いであっても、
それに、実は俺にはどうしてもこの爺さんに負けられない事情があるんだ。
この王都ダリスには、家族がいる。
この王都ダリスには、王都軍を束ねるためにデニング公爵家の人間が最低でも一人は常に配備されているんだ。それが叔父上達の誰かなのか、それとも優秀な俺の兄妹の誰かなのかは分からないけれど。
だけど、確かにいるのだ。
この王都ダリスに、俺の家族が。俺とシャーロットの家族が。
「囚われの王女殿下を目の前に、例えどれだけの難敵が立ち塞がっていようとな。
俺は
それはあいつ。俺の初めての友達であるビジョン・グレイトロードの杖。
けれど今、杖が無いことにも気付かない程打ちのめされ、自分を情けないと呪っているだろうあいつの無念さが染み込んだ杖でもある。
「この稀代の天才、エレクトリック・ペトワークスを前に大した自信じゃ。しかし、この場所ではちと狭すぎるのう。やはり、戦いの場には王都ダリスの周りに広がる平原が相応しいであろう。どれ、そろそろ外に出ようか。白マント共、大精霊の加護受けし
長杖を持つ
さあ、始めよう。
この一戦が俺の人生を大きく変える。
古き騎士道を是とする騎士の国で、正義を為そう。
ここは王都ダリス。アニメの舞台、始まりの聖地。
公爵家の落ちこぼれだった俺と彼女の出発点。
真っ黒豚公爵だった俺は真っ白に、半人前だった彼女は魔法に目覚めた。
王都への道中。あんなにシャーロットがそわそわして魔法の練習に必死だった理由が今、分かった。もうあの頃の俺たちはどこにもいないから、王都にいるだろう俺たちの家族に情けない姿など見せられる訳がないんだ。
「我が麗しの
「ずっと……この時を待っていました。見せて下さい、貴方の力を。この国に」
アニメではその姿さえ見せなかった彼女を前にして。
自分なりの正義を為すために――俺は、杖を握る指先に、力を込めた。
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