少年たち

「何してるんだ! やめろ!」


 橋の下でウォルフガングにリンチしてる少年たちに、エバンズは走りながら大声を出した。

 少年たちは、エバンズの姿を見ると一目散に逃げ出した。

 その中の一人が転倒した。

 起き上がって駆け出そうとする少年に、エバンズはタックルした。

 ハイスクール時代、エバンズはラグビー部に所属していた。……万年補欠だったが。


 暴れる少年を取り押さえ、彼の服装を確認したエバンズは驚く。

 ワインレッドのブレザー。胸には、王冠をモチーフにした校章。

 超名門校じゃないか。


 東オルガンで一番だといわれる私立ハイスクールの制服だった。生徒は、王族、貴族の末裔であるご子息がほとんどだ。


「君! 名前は!」

「離せよ、おっさん!」


 顔を歪ませて、少年は身をよじった。


「何てことをするんだ! 大勢で寄ってたかって」


 少年の手を後ろにひねり上げ、エバンズは手錠をかけた。


「話は署で聞こう。来なさい」


 くそ、と少年は唾を地面に吐き、地面を蹴った。


「おとなしくしなさい」


 あの学校の生徒だとは思えないな、とエバンズはあきれる。


「エバンズさん」


 ウォルフガングの様子を見ていたベアーがエバンズに声をかけた。


「全身を蹴られたようです。頭部への影響が心配です」


 ベアーに抱き起こされたウォルフガングは、鼻血だらけだった。


「俺はなんもしてねえ! 奴らがいきなり……!」

「病院に連れて行きます、ウォルフガングさん」


 ベアーを見たエバンズに、ベアーは察して頷いた。


「私が車まで背負います」


 エバンズはウォルフガングを背負い、立ち上がる。


「さあ、来るんだ」


 ふてくされた顔をしている少年を、エバンズは引っ張って促したーー。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る