第2話
健作はボーディングブリッジを抜けると、携帯を取り出して電源を入れて電話をかけた。
「今空港についたよ。これからタクシーで帰るから。」
午後から市ヶ谷で行われた会議に出席するための日帰り出張だったので、預けた荷物は無い。
ロビーを抜けると客待ちしていたタクシーに乗り込んだ。
「二中前。」
行き先を告げると、シートに身をゆだねて静かに目を閉じた。
タクシーは、明治橋を渡って旭橋を右折し壷川通りに入ると、すぐにハーバービュー通りへと分岐した。
那覇高校の前まで来ると、健作は口を開いた。
「あっ、そこを右に曲がってくれるかな。」
右折して200mほど進んだところでタクシーを止めて精算すると、目の前のマンションへ入っていった。
マンションのドアを抜けると、管理人さんが声をかけてきた。
「こんばんは、今日は遅かったですね。」
「こんばんは、ちょっと東京で会議があったので。そうそう、これ奥さんと食べてください。」
健作は、持っていた紙袋からお土産を一つ取り出すと差し出した。
「えっ、いつも悪いねぇ。」
「いえいえ、こちらこそいつもお世話になっていますから。」
健作は頭を下げるとエレベーターに乗り込んで、10階のボタンを押した。
エレベーターを降りてまっすぐ進むと、突き当たりの部屋の扉を開けた。
「ただいま。」
典子が奥から小走りで玄関までくると、靴を脱ごうとしている健作からかばんを受け取った。
「お帰りなさい、あなた。」
二人はお互いの存在を確認しあうようにしっかり抱き合うと唇を合わせた。
「明美はどうした?」
「『お父さんが帰ってくるまで起きてる。』っていってたのにソファーで寝ちゃったわ。
ご飯できてるわよ。」
「ああ、ありがとう。先にシャワー浴びてこようかな。」
健作は子供部屋を覗いて明美が寝ているのを確認するとシャワーを浴びに行った。
照明が落とされたリビングの窓の外には遠く那覇港の明かりが瞬き、その先は真っ黒な東シナ海が広がっている。
片隅には明るく照らされた大型の水槽が、薄暗いリビングの中に浮かび上がって、大きな白いイソギンチャクやクマノミのほか色とりどりの海水魚が泳いでいた。
健作はシャワーから出てきて水槽の前に行くと、棚から餌を取ってぱらぱらと水槽の中に入れた。
水槽の中はざわめきたって水面に散った餌を争うように魚たちは餌をついばんでいる。
典子は、料理を並び終えると声をかけた。
「あなた、できたわよ。」
「あ、ありがとう。」
椅子に座ると、オリオンを開けた。
「ハナハナハナハナ!」二人はグラスをあわせて乾杯すると、のどを潤した。
健作は、なす味噌に箸を伸ばして味わうと口を開いた。
「う~ん、おいしい!!
ノリの作るナス味噌は、最高だね。
今でも、初めて沖縄の地を踏んだその夜に食べたなす味噌の味と、語りあった夢のことは忘れられないよ。」
「あれから何年たったのかしら。・・・早いものね。」
ビールを飲み終えると、典子はキッチンでご飯をよそってきた。
「はい、あなたの大好きなフーチバジューシーよ、どうぞ。」
・・・駅員3の白昼夢は、ここで終わりです。
ここのところへんな夢ばかり見ます。
昨晩は、息ができなくなり、窒息しそうになってもがき苦しむ夢を見てしまいました。
普段何事も無いように呼吸しているのに、その呼吸ができなくなる恐怖・・・
僕の精神状態を表しているのでしょうか?
今まで大冒険活劇的な夢しか見たことがなかった・・・というか記憶に無かったのですが、どうしちゃったんでしょうね。
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