第13話 琉球音階
「ノリちゃん、沖縄の音楽って音階が独特だね・・・」
健作は、どこか遠くを見つめるようにつぶやいた。
「ええ、琉球音階は、南西諸島から奄美群島まで昔から伝わる琉球の伝統的な音階です。
西洋の音楽は七音階ですが、琉球音階は七音階から『レ』と『ラ』を抜いた五音階です。
最近、沖縄の音楽を『島唄』と呼ぶことがありますが、本来の『島唄』は、奄美群島に伝わる民謡のことをいうんですよ。」
「ノリちゃんありがとう。『島唄』が奄美の民謡をさすなんて知らなかったなぁ。」
健作は振り返った。
「渡邊先生、中村先生、琉球音楽を、ジャズに取り入れて演奏したら、面白くないですか?
ちょっとやってみましょう。」
アルトサックスを取り出してマウスピースを付けると典子に近寄った。
「ノリちゃん、この前みかけた盆踊りでみんなが踊ってた陽気な音楽・・・なんだっけ・・・阿波踊りのような・・・」
「踊りは『カチャーシー』ですね。あの時みんながカチャーシー踊ってたのは『六調』だったかな!?」
典子は三線を奏でた。
「そうそう、それ。それを最初からずっと弾いてくれるかな。
俺が途中でサックス吹くけど気にせず最後までね。」
曲が始まると、修は箸で空き缶やコップをたたいて軽妙なリズムを奏ではじめた。
典子の六調がワンフレーズ流れたところで、健作は『Take Five』をかぶせて演奏を始めた。
聴衆となった智子、渡邊先生、中村先生はあっけに取られたように口をぽかんと開けて聞き入っていた。
演奏が終わると、唖然と聴き入っていた智子と両先生はハッと我に返って拍手した。
沖縄の小学校では授業で三線の弾き方を習うので、多くのウチナンチュは三線を弾く事ができるが、典子の腕前はプロ級だった。
健作は典子に向かってにやっと笑った。
「ノリちゃん三線上手だね。しっかり僕に合わせてくれてたのが、よくわかったよ。先生、どうでしたか?」
健作は、渡邊先生と中村先生にの方を振り返った。
「いやー、これはやられた。奇想天外、でもすばらしい演奏だったね、感動したよ。」
渡邊先生は、健作の右手を両手でしっかり包み込んで握手した。
中村先生はにこやかに微笑えみながら口を開いた。
「これはこれは、なんとも驚かされたよ。典子君の三線もすばらしかったね。」
渡邊先生はお酒がまわっているのか、顔が赤い。
典子はちょっと顔を赤らめて、「ありがとうございます。私もこんな演奏初めて。とても楽しかったです。」と答えた。
中村先生はオリオンをぐびっと飲み干すと、「うんうん、これぞジャズの真骨頂だね。色々な音楽が出会い、そして融合する。そして、それを楽しむなんて、何とも素晴らしいじゃないか。」と言って大きく笑った。
この夜はみなにで音楽談義に花が咲き、いつ話が尽きるともなく夜も更けていった。
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