第125話 悩んでいる間にも時間は過ぎる

「くそ……」


 俺は、舌打ちをしたあと地面を蹴った。


「嘆くにはまだ早いですよ」


 キサラギさんが、そう言って俺の方を見る。


「……昴と言ったな?

 今から俺たちは、移動魔法でテオスの最終拠点に向かう。

 お前もついて来るか?」


 亜銀君が、そう言って俺の方を見る。


「俺は行くよ。

 ってか、亜銀、どういうことか説明してもらうよ?」


 亜金君がそう言って亜銀君を睨む。


「めんどいな……

 簡潔に言えば、俺はファルシオンからテオスに送られたスパイだ」


「……それで納得しろと?」


「事実だ。

 信じろとも言わないし信じて欲しいとも思わない」


「そっか……

 わかった。

 今日のところはそれで納得する」


 亜金君が小さくうなずく。


「で、昴お前はどうする?」


 亜銀君が、俺の方を再び見る。


「俺は……」


「行って来なよ昴」


 カイが、そう言って俺の方を見る。


「え?」


「ここは、私たちでなんとかするからさ……」


 優心さんもそう言って俺の方を見る。


「でも……」


「来るのならはやく決めろ。

 お前が悩んでいる間にも兵士は死んでいっている」


 俺は、どうしたらいいかわからない。


「恐らくテオスは、もうこちらにはきませんよ?」


 キサラギさんが、そう言ったので俺はすぐに尋ねた。


「どうしてわかるんですか?」


「ベルゼブブ、フィサフィーが戻るということはそれだけテオスの拠点が窮地に追われてるってことです。

 なので、こちらに来るとしても雑魚だけでしょう」


「そういうことだ。

 来るのならさっさと決めろ」


 亜銀君の言葉が胸に刺さる。


「昴、私は大丈夫だから……」


 カイが、俺の目をじっと見る。

 俺は、どうしたら?

 ダメだ、いつもこうやって悩んでばかり。

 悩んでいる間にも時間は過ぎる。

 悩んだ時間は戻っては来ない。

 でも、決めなくちゃ……


「行く……」


 ここで行かなければ一生後悔する。

 なんとなくそんな気がした。


「わかった。

 移動魔法で、テオスの拠点まで飛ぶぞ……

 十五の魔法ほど精密度はないうえに向こうにつけばバラバラだ。

 各自自分の身は自分で護れよ?」


 亜銀君が、そう言うと俺たちの体が光る。

 俺たちは向かう。

 テオスの拠点へと……

 これがテオスとの本当の最終決戦になるだろう。

 もしかしたら、死ぬかもしれない。

 だけど、俺が生きる。

 生きてカイを抱きしめよう。

 そして、告白するんだ。

 好きと……

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