第123話 黒大将が見ている

 ベルゼブブの黒き刃から閃光が走ると一花さんの頭をそれが貫いた。


「え?」


 俺は何が起きたのかわからない。


「危な……」


 一花さんが、そう言って俺の後ろから現れる。


「って、あれ……

 さっき頭を貫かれたんじゃ……?」


「あれは空蝉……

 死ぬかと思った」


 一花さんが、そう言って腕をなでおろす。


「死んだかと思いました……」


 俺が、そう言うと一花さんが舌を出す。


「あれは、当たれば死ぬと思う」


「一姉……

 大丈夫?」


 彼方君が、ゆっくりと一花さんの方に近づく。


「うん。

 大丈夫だよ」


 一花さんが、笑う。

 すると十五君もそばに来る。


「とりあえず、子供たちはゲートで避難させたよ」


「ゲート……?

 そうか、主が土方十五か……

 ならば、お主も殺さなくてはな」


 ベルゼブブが、そう言って黒き刃を向ける。

 そして、再び光る。

 十五君の姿が消える。


「……危ない、危ない」


 十五君の姿が現れる。

 無事だった。よかった。

 俺は、そっと安心した。


「うむ、ゲートの技は不便だな……」


 ベルゼブブが、そう言って亜金君の方に視線を移す。


「主の顔も知っている。

 亜金と言ったな、そして隣にいるのは亜銀か?

 裏切りの男か……容赦なく殺せるな」


「容赦?誰に対してでも容赦してにないだろう?」


 亜銀君がそう言ってベルゼブブにキリンを向ける。


「我に剣を向けるか……

 おもしろい!」


 ベルゼブブは、そう言って黒き刃を向ける。

 そして、光が放たれようとしたとき、キサラギさんがベルゼブブの腰に蹴りを入れる。

 ベルゼブブの体が大きく後退する。


「重いですね……流石に……」


「我の体を動かした?

 お主なかなかやるな?」


 ベルゼブブが、笑う。


「ほう……

 あのゲルンガを退けたか?」


 フィサフィーが小さく笑う。


「一時休戦にしてもらいました。

 でも、決着は必ずつけますよ」


 キサラギさんが、フィサフィーを睨み返した。

 ベルゼブブが笑う。

 笑っただけなのになんだ?この恐怖は……

 俺の心に声が響く。


 黒大将が見ている。


 と……

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