第116話 所詮この世は弱肉強食。やらなければやられる。

「裏切ったのなら裏切ったで俺が倒すまでだよ」


 亜金君は、静かにそう言った。

 俺は知っている。

 亜金君は、戦闘力は多分申し分ない。

 だけど、自分の弟を倒せるほど心は強くない。

 もしも亜銀君が裏切りだった場合……

 亜金君には恨まれると思うけど俺が倒そう。

 それが、友達として出来る最大限の方法だと思う。

 俺は静かに頷いた。


「亜金に昴。

 悪いがお前らは留守番だ。

 あと万桜とカイと優心もだ……」


「どうしてですか?」


 万桜さんが、バルドさんの方を見て睨む。


「お前らは子守の仕事を優先して欲しい。

 と言うかヤツらは、恐らくこの拠点にも攻撃を仕掛けるだろう。

 アンゲロスの方からは、彼方と一花が……

 そして、ルシファーからは十五が来てくれるそうだ」


 バルドさんが、そう言って静かに頷いた。


「そっか……

 なら、仕方がないわね……」


 優心さんがそう言うと静かにため息をついた。


「うむ。

 すまないが万桜もそれで許してくれるか?」


 バルドさんが、そう言って万桜さんの方を見た。

 万桜さんは、小さくうなずく。


「そういう理由なら仕方ありません……

 子どもたちの護衛は任せて下さい」

 万桜さんが、そう言って頷く。


「ああ、任せたぞ」


 バルドさんが、ニッコリと微笑む。


「はい」


 俺が返事をすると作戦会議が始まった。

 ファルシオンから送られてきた座標を元に十五君が作ってくれたゲートをくぐってテオスの拠点を襲撃するらしい。

 俺たちは、その間パンドラ内にて待機だ。

 だけど楽ってわけじゃない。

 少ない戦力で迫り来るテオスの兵から護らなければならない。

 恐らく攻めてくるテオスも雑魚じゃない。

 弱くてもジルクラスの敵が来るだろう。

 ジルも雑魚じゃない。

 戦うたびに強くなっている。

 どうやって倒すかまではわからない。

 だけど、倒さなければ……

 こちらがやられる。

 所詮この世は弱肉強食。やらなければやられる。そんな世界だ。


「気合入れていけよ?昴。

 パンドラに攻めてくるテオスの兵も雑魚じゃない。

 今回は、潰す気で来るだろう。

 恐らく今までのような撤退はしないだろう。

 こちらも逃げ場所がない分、引けないだろう。

 だから、子どもたちのこと……

 このギルドのことを頼んだぞ」


 かみさまが、俺の方を見てそういった。


「ああ、任せてくれ」


 俺は、胸を張ってそう言った。

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