第73話 お別れのバイバイ

「さて……

 そろそろ時間だ」


 かみさまが、小さくうなずく。


「かみさま、なんか用事あるのか?」


「何を言っている?

 ソラの葬儀だ……って知らされてないのか?」

 ソラの葬儀?


 あぁ、そうか。

 ソラは死んだんだ。

 俺は一気に現実に戻される。

 俺は、家に一旦帰ると準備をしてカイと一緒に葬儀に出た。





「ねぇ、一体誰が死んだの?」


 プレゲトンが、亜金君に尋ねる。


「ソラさんだよ」


「ソラってサキュバスの?」


「うん」


 プレゲトンの言葉に亜金は頷いた。


「で、あの昴は大丈夫なわけ?

 アイツ、ソラって子の尻に敷かれてたじゃない。

 大事な子だったんでしょ?

 後追い自殺とかするんじゃ……」


 プレゲトンが、心配してくれている。


「そんなことはしない」


 俺が、カイを連れて現れるとプレゲトンが、目を丸くして驚いている。


「カイ?

 アンタ、そっち側にこれたの?ジルとの契約は?」


「契約は破棄してもらった。

 そして、新しい主は昴だ」


「そう……

 素直によかったわねと言えないわね」


 プレゲトンが、静かにうつむく。


「てっきり責められると思ったのだが?」


 俺が、そう言うと亜金君が答える。


「責める理由なんて無いよ。

 ソラさんが、カイさんの話をしているのよく聞いていたから……」


「私の話か?」


「うん。

 ぶっきらぼうだけどとても優しいお姉さんがいるって」


「そんなことを……?ソラが……」


 俺はゆっくりと視線をソラに移した。

 するとそばで優心さんが大粒の涙を流しながら泣いている。


「優心さん……」


「昴……

 ごめんね。

 一番つらいのは昴なのに……」


 優心さんは、涙を拭いて言葉を続けた。


「貴方が、カイさんよね?

 1回見たことがあるわ……」


 ヴィンと戦った時だな。


「ああ。

 あの時は、すまなかった」


「うんん。

 貴方は昴に護られてね……

 昴は最強の壁の二つ名を得たのだから……」


「ああ」


 カイは、うなずく。


「昴。

 そろそろソラとお別れしてこい」


「はい」


 バルドさんに呼ばれ俺は、ソラにお別れのバイバイを伝えた。

 長くは語らない。

 ソラは、自分が話すのが好きなくせに人の話は聞かない節があった。

 だから、長くは語らない。

 だって、そばにいてくれるだろう?

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