第60話 唸れ音々斬丸

 俺たちは、かみさまの魔法で西の村に向かっている。

 かみさまが使っているのは、移動の魔法だ。

 便利なので俺も使いたいが……

 どうやら魔法のキャパシティが足りなく俺では使用不可らしい。

 あと魔法の素質もないらしい。

 ダメダメ尽くしだ。

 まぁ、かみさまの魔法で楽々っと移動できるからいいか……

 そこから、さらに30分ほど飛んだあと万桜さんが目を細める。


「あの煙がそうなのかしら?」


「そのようだな」


 かみさまがうなずく。


「ってか、かなり燃えてないか?」


 俺が、そう言うとソラがうなずく。


「はい……

 テオスは、無抵抗な人でも容赦ありません。

 女も子供も平気で殺します。

 女人は殺されるならまだいい方です」


 そう言って、ソラが言葉を濁す。


「どういう意味だ?」


「兵士の生産に使われるんです」


 俺の問いにソラがすぐに答えた。


「生産?」


 俺には、いまいちピンと来なかった。


「ようは、モンスターや人の子を孕まされて子供を産むだけの工場にするってことだ」


 かみさまが、すぱっと答える。


「ストーレートに言うわね」


 万桜さんが、ため息をつく。


「余は、周りくどいことが嫌いだからな」


 かみさまが、余裕の笑みを見せた。


「って、見つかったみたいよ。

 弓が襲ってくるわ!」


 万桜さんは、そう言って刀を召喚した。


「早いな……

 ヤツラの中には目のいいヤツがいるらしい」


「とりあえず弓矢は、私に任せて!

 唸って音々斬丸!」


 万桜さんが、そう言って一振り振り下ろすと空間がぐにゃりと曲がった。

 すると弓矢が、空間に吸い込まれるように消えていった。


「凄い……」


 俺は、素直な感想が出た。


「うむ。

 流石は、音々斬丸。

 見事な切れ味だ」


 かみさまが、そう言うと万桜が頬を膨らませる。


「私の腕もいいんですけど?」


「それは認めてやろう。

 さぁ、次の弓が飛んでくるぞ」


 かみさまは、そう言って右腕を前に伸ばした。


「弓が来る!」


 俺は、ソラを抱きしめ盾になろうとした。


「かみさまバリア。

 赤の盾だ!」


 かみさまが、そう言うと赤い盾のようなものが現れる。

 そして、飛んでくる弓矢を全てて燃やし尽くした。


「燃えた?」


 思わず声が出た。


「これが、かみさまバリアの実力だ」


 かみさまが胸を張って威張った。

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