第47話 童貞喪失の大チャンス

 

 なんとなくソラのことがわかった気がする。


「セックスは怖いんだな……?」


「セックスが怖いんじゃないです。

 私の裸を見られて嫌われるのが怖いんです」


「どうして嫌いになるのだ?」


「ツギハギだらけなんです」


「ソラはソラだろう?」


「そうですが……」


「だったら大丈夫だ。

 俺は、ソラを嫌いにならない」


「そうですか……

 なら、しますか?」


「何を……?」


「セックスです」


「今はいいや」


「え?」


 ソラは、目を丸くさせている。


「そういうのはソラを完全に惚れさせてからするよ」


「ええ?

 いいんですか?」


「うん」


 とは言うものの俺は、完全にやってしまったと思っている。

 折角の童貞喪失の大チャンスだったのに……

 本当に俺は、バカだと思うよ。

 でも、セックスってそんな簡単にできるものなのだろうか?

 していいものなんだろうか?

 俺の中での自問自答を繰り返す。

 そういいつつこの場でエッチしちゃえと言う俺と、そういうことはやめた方がいいという俺がいる。

 よくある天使と悪魔の自問自答というやつだ。

 大抵悪いほうが出て誘惑に負けるのだけど……

 俺は、後者のものと童貞だから相手を満足させれない……という理由で断ってしまった。


「本当に本当?」


「うん。

 本当だよ」


「ありがうございます」


 ソラは、そう言って小さく震えた。

 俺が、ただソラを抱きしめることしか出来なかった。

 本当につくづく思う。

 俺は情けない。

 本当に情けない。

 ただソラの温もりだけが俺の救いだった。

 ソラは疲れたのか静かに寝息をたてた。

 俺もゆっくりと目を閉じた。

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