第43話 男は女を護ることで強くなれる

「あ、逃げた……?」


 俺は、クレイジーが飛んで行くのを見るしか出来なかった。


「おいおい。

 昴よ」


 バルドさんが、俺の方を見る。


「はい。なんでしょう?」


「ここは、お前がクレイジーのヤツを追いかけようとして俺がそれを止めるってのがパターンじゃないか?」


「あ……」


 確かに、それはよくあるパターンだ。


「『あ……』じゃありません。

 あんなの昴君ひとりで追いかけれないですし、追いかけたら死んじゃいますよ?」


 ミズキさんが、ため息混じりに答える。


「そんなに強いのですか?」


 聞かなくてもわかるけどとりあえず聞いてみた。


「ファルシオンで例えると隊長の中級レベルね」


「ファルシオンってなんですか?」


 これは、気になっていたけど聞けなかったことだ。


「ファルシオンと言うのはこの世界の国際ギルドで正規では、最強のギルドになるわ。

 まぁ、簡単に言うと軍鶏爺や兵長クラスの人がゴロゴロいるギルドよ。

 隊長は、13人いるの。

 ちなみにウチのギルドは、正規ギルドの中では3番目に強いのよ?」


「もしかして、2番目に強いのはテオス?」


 それを聞いたミズキは首を横に振る。


「いえ、テオスは裏ギルド。

 正規ギルドではないの」


 裏ギルド?テレビやアニメに出てくる闇ギルドみたいなものか?


「テオスのメンバーは知らされていないが、ファルシオンと同等かそれ以上の実力の持ち主だ。

 なにせ魔王と神族のトップクラスの実力を持ったヤツラがゴロゴロいるんだからな。

 強くて当たり前だ。

 いずれ俺たちはヤツラと戦うことになるんでな。

 昴。お前も実力をつけるんだな」


「え?」


「テメェの女くらいテメェで護れ!」


 バルドさんが、そう言って豪快に笑う。

 俺が、ソラを護る……

 俺は、ソラの方を見る。

 ソラは、まだ小さく震えている。

 姉が敵意を向けて攻撃したこと、クレイジーというテオスの幹部との遭遇。

 普通の女の子なら怖くて泣いているに違いない。

 そして、ソラも普通の女の子のはずだ。


「そうですね。

 護ります」


「ご主人様?」


 ソラが目を丸くして驚いている。


「大丈夫だぞ。

 ソラ、カイもお前も確実に護るから……!」


「はい!」


 ソラが嬉しそうに笑う。


「そして、亜金」


「はい」


 亜金君が、バルドさんの方を見た。


「お前もその女を護るんだぞ?」


 バルドさんは、人型に戻ったプレゲトンの方を見た。


「護る?誰が誰を?」


 プレゲトンが、バルドさんの方を見る。


「亜金が、お前をだ……

 プレゲトン、久しぶりで悪いがここからさきはテオスとの戦いは避けれないだろう」


「そんなの覚悟の上よ」


「だったらわかるよな?

 男は、女を護ることで強くなれるんだ」


「ふーん。

 まぁ、興味ないけど死なない程度に頑張ってよね!」


 プレゲトンは、そう言って亜金君の背中を叩いた。


「プレゲトンさん痛いよ……」


「私のことは、呼び捨てでいいわよ?

 もちろんこの場にいる全員ね」


「わかったよ。

 プレさん」


 亜金君が、そう言うとプレゲトンが目を丸くさせる。


「プレさん?

 この私の偉大な名前を略して言うなんてね……

 アンタ、見込みあるわ」


 プレゲトンが、小さく笑った。

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