第42話 クレイジーよりクレイジーなモノ

 軍鶏爺がジルに決定打を与えようとしたその時。

 ひとつの閃光が、軍鶏爺を襲った。

 軍鶏爺はその閃光を紙一重でかわした。

 その閃光はひとつの塊となり人の形になった。

 そして、その形はやがてきちんとした形となり女の人の形になった。

 ゴスロリで、ロングスカートを履いた少女は軍鶏爺の方を見て笑う。


「あなた、クレイジー?」


 少女は、そう言って軍鶏爺の方を見る。


「ぬ?貴様は、クレイジー・クレイジーか?」


「あは。

 あなたクレイジー?

 でも、私はもっとクレイジーなの!」


 少女は、そう言って軍鶏爺に向かって走る。

 軍鶏爺は、突然の現れた少女にも動じること無く優勢に戦っている。


「あの女の子誰?」


 俺は、ソラに訪ねた。


「あの人の名前は、クレイジー・クレイジー。

 テオスの中でも指折りの実力者です」


「クレイジー・クレイジー?」


 なんか強そうな名前だ。


「……カイ」


 クレイジーが、小さな声でその名を呼んだ。


「は、はい!」


「今のうちにジルを連れて逃げなさい」


「え?」


「貴方はもっと沢山の生物と交わり強くなるの。

 それが、ベルゼブブ様の願いよ」


 クレイジーは、そう言って笑う。

 名前通りクレイジーな人だと思う。

 もしかしたら、クレイジーよりもクレイジーな人は存在しないのかもしれない。


「く……」


 ジルが、俺と亜金君の方を睨んでいる。


「ジル。

 任務の失敗の代償は大きいわよ?」


 クレイジーが、くすりと笑う。


「俺は、まだ負けてない」


 ジルが、そう言うとクレイジーがため息混じりに言う。


「負ける前に助けに来たんじゃないの。

 負けてから助けるのも楽しかったけれど、このお爺さんと戦えるなんて……

 想像するだけで濡れちゃうわ」


「ヌシは、ワシを倒せると思ってるのか?」


 軍鶏爺がそう言ってクレイジーを睨むとクレイジーが笑う。


「ってか、どうあがこうとレベルアップ仙人じゃない?

 補助タイプの魔導師が攻撃タイプの魔導師の私に勝てるわけないでしょ?

 強いと言ってもファルシオンの弱い方レベル。

 そんなんで、私に勝てるとでも思ってるのかしら?」


 クレイジーが、そう言って傘を召喚した。

 そして、その傘を軍鶏爺に向けるとそこから釘を放った。

 軍鶏爺はそれを避ける。

 しかし、クレイジーは静かに笑う。


「さ、ジル様。

 クレイジー様が時間を稼いでいる間に……」


 カイが、そう言うとジルに手を差し出す。


「亜金!

 覚えていろよ!お前は必ず殺してやる。

 そして、プレゲトン!お前は必ず犯してやるからな!」


 ジルは、そう言って姿を消した。


「ジルとカイは、移動の魔法でここから脱出出来たみたいね。

 私もここから去ろうかしら……?」


 クレイジーが、そう言って軍鶏爺の方を見て笑う。


「逃げる気か?」


 軍鶏爺がそう言うとクレイジーが言葉を放つ。


「いくら私が強くても、貴方たちとバルドたちその他大勢を相手にす気にはなれないわ」


 その言葉を聞いて俺は、はじめて周りの気配を感じた。

 そこには、バルドさん、ミズキさん、そして優心さんや万桜さんに玉藻さんそして、強そうな人たちが沢山集まっていた。


「なにこれ……?

 このギルドってこんなに強そうな人たちがいたの?」


「……さて、それじゃ。

 皆さんごきげんよう」


 クレイジーは、そう言って空高く飛び上がり姿を消した。

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