第29話 ちゃんと仕事はしましょう

「ふふふふふ……

 こんな所で仕事をサボっていたのね……」


 万桜さんが、静かに俺と亜金君の頭を鷲掴みにする。


「……万桜さん?」


 俺は、万桜さんの名前を呼んでみる。


「昴君に亜金君、覚悟はよろしくて?」


 万桜さんの目が黒く輝く。


「昴君、逃げるよ!」


 亜金君は、そう言って万桜さんのスカートをめくる。

 亜金君、このタイミングでこんな行動をするなんて……

 なんて漢なんだ!

 でも、残念。

 俺のところからでは下着は見えない。

 って、今はそんな場合じゃないな。

 俺も亜金君の後を追って逃げよう!

 俺は必死で走った。

 天使のような形相で追いかける万桜さん。

 この状況でこの表情……

 物凄く怖い。


「あははは!

 ふたりともまてー」


 万桜さんの笑顔が怖い。

 俺は、全力で走ったけれど……

 すぐに追いつかれる。


「どうして逃げるのかなぁー?」


 万桜さんが、俺の体を掴む頃には亜金君の姿はもう何処にもなかった。

 亜金君、最後の最後で裏切ったのか……?


「昴君?

 ちゃんと仕事はしまそうね?」


「はい」


「で、どうして逃げたのかな?」


「えっと……」


「罪悪感があるからじゃないかな?」


「えっと……」


「心の中の何処で、悪いって思っている部分があるんじゃないかな?」


「……はい」


「次、仕事をサボったらきつーい肉体労働をお願いしちゃうからね!」


 万桜さんが可愛く言ったけどなんか怖かった。

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