第19話 オークのくせに生意気な!

 この水晶のことを優心さんはオーブと呼んでいる。

 オーブに当たったオークは悲鳴をあげて、そのままその場に倒れて動かなくなった。


「え?もしかして殺したの?」


 俺の問に玉藻が答える。


「そうしないとお前は殺され私たちは性の玩具にされる。

 さっきも言っただろう?」


「聞いたけど……

 なんか物凄い罪悪感が……」


「お前が殺したワケじゃないだろう?」


「そうだけど……」


「糞が……

 男はバラして焼き肉だ。

 女は犯して飽きたら焼き肉だ!」


 オークが嬉しそうに言う。


「わ!オークが喋った!」


 俺は思わずそんなことを言った。


「……コイツ俺らをバカにしているのか?」


 オークが、そう言って俺の方を睨む。


「いや、バカにしているわけじゃないけど……」


 オークってRPGで言うと雑魚の中間クラスだよね。

 オークは、俺に向かって斧を投げる。

 俺は、その斧を華麗に避けた。

 なんだかんだで俺はイジメられ慣れているからね。

 こういうのを避ける程度の反射神経はある。


「コイツおもしろくないか?」


 他のオークが、再び俺に斧を投げる。


「俺、いいこと考えたぞ。

 この男を殺した奴が好きな女を孕ませるとかどうだ?」


 1匹のオークが楽しそうにそう言った。


「んー。

 なんか発想が下品だね。

 レイプで脱童貞とか自慢になんないしね」


 俺が、そう言うとオークたちは、舌打ちを打ったあと次々と斧を投げてきた。


「……図星のようだな」


 玉藻さんが、そう言って次々とオークを斬り次々殺していく。

 優心さんも魔法で次々とオークを倒している。

 と言うか、玉藻さん魔術師じゃなかったのかな?

 俺は、そんなことを思ったけれど玉藻さんは魔法を使っていなかった。

 優心さんは、シャーマンって聞いたけれど……

 オーブをブンブン振り回して戦っている。

 その二人の姿は、まさに戦士だ。

 優心さんに関しては、魔法もちょこちょこ使っている。

 戦っている。

 ふたりとも一生懸命戦っている。

 でも、俺は……


 ひたすら斧を避けることしかできなかった。


「さ、流石!

 素早さ8500……

 あんなに斧を避けれるなんて。

 異世界から来た男は違うの?」


 優心さんがそう言って目を輝かせる。

 うん。

 そんなことを考えてないで助けてよ。


「でも、攻撃力がないんだよね」


 優心さんがそう言って俺を襲うオークを炎の魔法で焼いた。


「優心さんも凄いんだね」


 俺は、そう言ってうなずいた。

 でも、これが油断だった。

 オークの投げた斧が俺に命中したのだ。

 しかし、痛くも痒くもない。

 もしかして刃じゃなく柄の部分に当たったとか?

 不思議に思ってその斧を見てみたら……

 斧の刃の部分が欠けていた。


「流石、防御力7500……」


 優心さんの目がさらに輝いている。

 体力がないすぐにバテると思ったけど。

 当たってもこの程度なのなら、そんなに危険じゃないのかも?


 でも、玉藻さんや優心さんの消耗からわかる。

 オークって意外と強いんだね。

 RPGのゲームみたいに、1匹ずつ攻撃を仕掛けてくるとかじゃない。

 集団で連携を取って襲ってくる。

 そう言うゲームもあるけど。

 実際に目の当たりにすると恐ろしいことこの上ない。

 クソ、オークのくせに生意気な!

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